この春、東京大学の学食に新しくオープンしたハンバーガー店がちょっとした話題を呼んでいる。提供されたハンバーガーに1000円も払ったのに、クオリティがいまいちだったという苦言がSNSで注目を集めたのだ。一方で中には店を擁護する声も。はたして話題のハンバーガーの実力はどうなのか? 真相を確かめるべく、現場に足を運んで調査してみた。(取材・文:昼間たかし)
誰も客が来ない1000円バーガーの寒さ
話題の店があるのは、東京大学本郷キャンパスの学生食堂。400席以上があるキャンパス内で最も規模が大きい。昼飯時は、多くの東大生で賑わうスポットである。
さっそく、カウンターで件のバーガーを注文した。
投稿されていたのはクラシックビーフバーガーのセットらしい。ハンバーガーとポテトとドリンクのセットで、4月中は「新生活応援フェア」で1000円になっていた。
ツイートでは10分も待ったと書かれていたが、わたしの場合は提供まで3分だった。これがそのセット=写真=だ。
話題になった投稿とほぼ同じものがでてきた。違うのはピクルスの枚数ぐらいである。
わたしが注目していたのはなんといっても「肉」だった。いくら、写真ではあまり美味しくなさそうでも、食べて美味しかったらハンバーガーとしては大正解だ。全く問題がないからだ。
写真撮影のために、バンズを開けて数枚撮った時点ではまだ、わたしは希望を抱いていた。もしかしたらうまいかもしれないではないか!
しかし、バーガーを口に運んだ瞬間、その希望は無惨にも打ち砕かれた。なぜなら、料理の温かみというものが存在しなかったからである。最初の感想はむしろ「冷たい」である。パテには焼き立て感がまったくない。調理場は見えないので確かめたわけではないが、もしかしたら作り置きかもしれないと感じてしまったぐらいだ。
パンはちょっと美味しかったが、肝心の肉にジューシーさは全く感じられなかった。味に対する考えには個人差があるとは思うが、残念ながら筆者は何の感動も覚えなかった。むしろなんでこんなモノを食べなければならないのかという敗北感を味合わされた気がしてしまった。
それでも、ポテトがうまければ、まだ救いはあったかもしれない。しかし、この時点で筆者の希望は潰えていた。なぜなら、店員がカウンターで作り置きのポテトを盛り付けている姿をバッチリ見てしまっていたからだ。もちろんポテトは水分を含んでしなしなになっていた。カリッとした揚げたて感は皆無である。
ちなみにメニューのイメージ写真はこれ↓
こうした実情がもう大学では知れわたっているのだろうか。30分ほどカウンターの様子を観察してみたが、その間、客は僅かに3人程度だった。メニューを興味深げにみる人はいるのだが、ほとんどが、そのままUターンするのだ。
もちろん他のバーガーもあるのだが、東大トリプルバーガーはポテト付きで1640円。とろける濃厚チーズバーガーは同じく1000円。ドリンクを付けるとそれぞれ1850円と1200円になる。
値段帯としてはマクドナルドやモスバーガーよりもちょっとお高め。チェーン店だとフレッシュネスバーガーと同じぐらいの価格帯ではないだろうか。ただ、残念ながらここは大学内の学生食堂。500円前後のラーメンや丼を学生が食べているところで、この価格帯のハンバーガーが求められている様子はなさそうだった。
調べてみるとこの店は「PANES HOUSE」という名前で、飲食チェーン「イタリアントマト」が運営する店舗だった。下北沢に1号店があり、東大が2店舗目ということだ。食べログによると予算2000〜3000円ぐらいの店らしい。SNSで出ていた擁護論の中には、元の店の価格帯に比べれば安く設定されているのではないかという意見もあった。
しかし、なにせ場所は学生食堂。店員さんたちの雰囲気も、学食で働いている他の人たちとほぼ変わらない。店のつくりも、学食のカウンターに店の看板を貼り付けただけ。座席も通常の学食と共有なのである。
はたして彼らはここからどう巻き返すのか。奇跡の復活プランがあったりすると面白いのだが……。ちなみに筆者はせっかくなので久々に赤門ラーメンも食べて帰ることにしたのだった。ああ、うまかった。