ガンプラ転売ヤーは「人間の欲の成れの果て」 荒らされまくる市場、もはやザクタンクを気軽に組むことも叶わず

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転売の横行により欲しいものが、定価で手に入りにくくなっている。これ、めっちゃバカらしくない? なんで下品なテンバイヤーの小銭稼ぎのために、一般の消費者が迷惑被ってんの?
先日もこんなことがあった。9月20日、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』版のリックドムがかっこよかったので、新発売のガンプラを買いに行った。その店舗は10時開店。昼飯を食ってだらだらして、そこからふらふら寄り道で田んぼとか見ながら到着したのが13時ぐらいだったかな?
案の定、全部売り切れていた。店員さんに聞けば「最近はテンバイヤーもそうですが、ガンプラファンも争奪戦に参加して、ちょっとした修羅場です」とのこと。おぼえがある。僕が20代でエロビデオ屋でバイトしていた頃のことを思い出した。(文:松本ミゾレ)
人は新商品に群がり、ときに争う習性がある
その店は24時間営業だが夜中に新作を入荷して店舗の端末に手入力でちまちま登録後、陳列するのが朝9時ごろだった。そうすると常連たちが7時過ぎぐらいから次々にやってきて、新作の棚の前に陣取る。一応、商品を並べている店員が棚から離れるまでは手出し無用というルールがあった。そうしないと、店員からエロDVDを奪い取って勝手にレジに持って行く奴がいたためだ。
このルールによって店員に危害を加えられることはなくなったが、今度は陳列した瞬間に、常連たちの熾烈な争奪戦が繰り広げられることになる。これが醜かった。夜のおかずをいい大人が奪い合うのだ。新作なんだから1泊2日でどうせ返却されるのに。
で、こういう争いは別にエロだけではない。その店では一般DVDも入荷していたが、当時流行していた韓流ドラマ。これを巡って中年女性たちが乱闘を繰り広げるということがマジであった。少し前まで談笑していた客同士でそういったことをやるので、ちょっとしたトラウマになっている。
こういう具合に、人は欲に目がくらむと商品に群がる習性を持ち、争うこともある動物なのだ。じゃなきゃ転売屋があんなにみじめったらしく商品に群がったりしないでしょ。あいつらは人間の欲の成れの果てだよ。
ガンプラが商材と見なされるようになって何年になるだろうか。もはや、まともにどこの店舗にもどっさり在庫が……なんてことはなくなった。昔みたいに旧キットのMSVが埃を被っていて「たまにはザクタンクでも組むか」みたいな気まぐれ購入は、もう出来ない。
第一次ガンプラブームばりのガンプラ難では?
僕は争奪戦というものが苦手だ……というか並ぶのが嫌だ。ギャンブル依存症だけど、パチンコホールに開店前から並ぶのもつらい。オタクなのでプラモやフィギュアは買うが、限定品を店頭販売とかにされても一切買いに行かない。
バンダイのweb通販サイト・プレミアムバンダイの予約注文アイテムも、人気が集中するようなものはやはり避ける。まして昔は鈴なりだったガンプラを、開店前から並んで、争奪戦に参加するなんて絶対に嫌だ。
でもそうじゃない人が多いから、今の過熱したガンプラ入手難は現実としてそこにあるわけで。並ばないと買えないものになっちゃうと、僕はもう「じゃ、いいです~」になるが、そうじゃないファンはテンバイヤーとの争奪戦に参戦しなければならない。これは不幸だよね。
プレミアムバンダイは限定ガンプラも発売しているが、たしか平日16時から予約受付開始かつ、瞬殺という状況が続いている。予約解禁前には大勢がパソコンやスマホの前で待機する。そして一斉に「カートに入れる」をクリックするから、サイトが一時重くなるのだそうだ。
そういう努力をしないとガンプラが買えない時代だ。「そんな努力もしないでガンプラ欲しいとか言うなよ」と、努力家からXでやじられたこともある。熱心なことだ。
この入手難。まるで80年代初頭にガンプラが社会的ブームになった頃にタイムスリップしたような錯覚をおぼえる。『機動戦士ガンダム』は本放送時、低視聴率で予定より早く最終回を迎えたというのは有名な話。
一方で1980年に発売されたガンダムのプラモデルは、その出来の良さ。そして300円という低価格から空前のヒットとなり、これによって数々のモビルスーツが立体化されていった。これが後に第一次ガンプラブームと呼ばれる現象だ。
僕はこの頃の話については書籍でしか把握していないが、需要に供給が追い付かず、小売店も人気があるのになかなか入荷されないガンプラにやきもきしたようだ。小売店によっては、ガンプラとその他のプラモ(ヤマトの売れ残り戦艦など)を抱き合わせで売っていたという。
まあ、それでも定価で売るし、そもそも商売なんでテンバイヤーよりは幾分悪質性は落ちる。僕もまだ生まれていない頃の、遠い昔の話だ。
でも、考えてみれば今のガンプラ入手難は、その第一次ブームと同じようなもやもやを、本来のファンに与えているんだろうなぁ。周りにいるオタクたちも、もうガンプラは買うのを諦めたと宣言する者も増えたもん。まあ、みんないい年齢だからね。小銭目当てのテンバイヤーと混ざって争奪戦なんか、そりゃしたくないわなぁ。
……バンダイと言えばこの夏に新しいプラモの工場が稼働したばかりで増産もしていることだろう。でも、やっぱり個人的にはふらっと出向いてなんか買う、というガンプラあるあるがもうマジで通用しなくなっていて悲しい。
どの店も、大体置いてあるのはランナー流用しまくりなSDキットと、山ほど出荷したであろうわずかなラインナップのHGキットぐらいだもんね。ともあれ、真剣にガンプラを買い集めている人の受難はまだ続きそうだ。
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