女性には父親がおらず片親で育ったが、「母は、いまで言う毒親です」と親との関係を語る。
「“親の言う事に逆らうな”的な親子関係でした。母親からは、『お兄ちゃんは男の子やから大学に行かせて親の敷いたレールに乗せないといけない。女の子は嫁に行くだけやから大学なんか行かなくていい』と言われて育ちました。『良い所にお嫁に行って早くお母さんを楽にしてね』とも言っていましたが、それはお金を持って来い、という意味です」
そんな男尊女卑の家庭環境から、早く逃げだしたいと高校卒業と同時に実家を出た。寮付きの会社に就職し、現在のご主人と出会い結婚したという。
結婚が決まった26歳のとき、女性は関西で生活していたが、挙式は夫の実家がある九州で行うことになった。
「式の費用は、両家の初顔合わせの時に『主人側が持つ代わりに結納金はなしで良い』と話がつきました。私も同席して聞いていましたし、双方が同意したはずでした」
結納金は嫁をとる夫側が用意するのが一般的だが、それを「結婚式の費用を持つ」ことで結納金に代えたのだろう。女性の実家側にとっても、経済的にそれでよかったはずだ。ところが、いざ挙式となったときの母親の行動は凄まじくひどいものだった。
「母親は飲み過ぎて泥酔していました。『娘は私が1人で育てた』と主人側の参列者に言ってまわり、日本酒を強要したり。しかも『式場の会場が狭い!もっと大きな所でできなかったのか?狭すぎてこっちが恥しい思いをするけどおめでたい席やからまぁしょうがない。けど義父も大した仕事してないから我慢してあげる』と義父に言ったりしていました」
自分の子育て自慢だけならまだしも、挙式代を負担してくれた夫の実家に対して驚くべき暴言を並べ立てたのだ。「母親はもとから酒癖が悪く、近所の人と何かとトラブルを起こしていました」と振り返る女性。せっかくのハレの日に身の縮むような思いをしたことだろう。
また母親は「日本酒の種類が1つしかないのは関西人舐めとる!」と挙式スタッフに食ってかかったり、兄は兄で新郎の叔父さんの悪口を言ったりなど、言動は目に余るものがあった。その悪口を聞いた夫は「お前の兄ちゃんとは付き合い無理!」となり、兄と夫の間で連絡を取ることはなくなったという。
「うちで頂いたお祝い事のご祝儀はうちのもの!」
驚くことはそれで終わらない。散々だった披露宴も終わり、帰り支度をしていたときだ。義理の実家から、「新婦側のご祝儀が入った紙袋が見つからない」と言われた。
「兄に確認したら、『オカンが持って行った』と言われました。母と兄が、私に贈られたご祝儀を全部持ち帰ってしまったんです。母親は、『うちで頂いたお祝い事のご祝儀はうちのもの!義家には関係ないでしょ?』と……。母と兄はご祝儀も出していませんでした」
なんと式の費用もご祝儀も出さない立場で、断りもなくお祝い金を持ち去ってしまったのだ。しかも
「挙げ句の果てに、関西から参席した私側の知り合いと母親の車代(飛行機代)を主人の実家に電話で請求してきました」
などと暴挙はとどまる所を知らなかった。いくら遠方でも実の娘の結婚式でかかった交通費を、夫の実家に請求するなどありえないことだ。さすがに夫の実家は納得できず、「車代まで払えません」と伝えたところ、母親は切れた。
「母はブチ切れて、私や主人に毎日電話をかけてきました。『金を払え、そっちの都合で九州まで行ってやったんだから払え!』と聞く耳持ちません。その後は週2で1か月ほど続き、主人がとうとうブチ切れて母親と大口論になりました」
ご主人は怒り心頭でこう口火を切った。
「お前が結納金いらんと俺の親に言ったはずや!それを今更飛行機代出せ?ふざけんな!〇〇ちゃんは一切実家に帰らせんからな!てゆーか縁切ったるから二度と電話してくんな」
母親は「このクソガキが!今からそっちに殴り込みに行く」と応じ、夫は「勝手に来いや」と言い放ったが、結局母親が殴り込みに来ることはなかった。新婚夫婦とその母親とのやり取りとは、到底信じられないような修羅場だ。
「この出来事を境に私は実家と距離を置き、電話すらしなくなりました」
と絶縁状態になった女性。後日談として、それから2年後に母親は病に倒れ、要介護状態になった。現在は「兄が面倒をみています」とのことだ。
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