ちなみに夫の資産について聞くと、「都心に戸建てと別荘2件、住宅ローンなどの借金もなく、金融資産も相当あったのではないでしょうか」と明かした。勝手に家を漁られたことに気付いたときは、どういう状況だったのだろうか。
「消灯して仕事に出たのに、帰宅したら家の電気が全部つけっぱなしでした。室内の様子に違和感があって、金庫も開いていたんです。当時は泥棒だと思い、警察を呼びました。すると刑事さんが言うには『泥棒は土足で入るが、床がきれいなので家族ではないか』という話でした」
まさかと思ったが、金庫のダイヤル番号を知っているのは自分たち夫婦と夫の実家だけだった。義実家に確認してみると、やはり家に来たことを認めたという。
「誰が来たかはあまり記憶にないのですが、持ち出されたものは全く返されませんでした」
だが女性の災難はこれで終わらなかった。「家の水道や電気が偽名を使って止められる」といった、えげつない「追い出し工作」が始まったのだ。
「真冬で雪が降っていたのでよく覚えていますが、寒いので電気ストーブをつけようとしたらつかないんです。電気もつかない、水も出ないので驚きました。凍えながら電気会社などに確認したら、勝手に解約されていました……」
さらに女性の職場にも嫌がらせの電話をかけてくるタチの悪さだった。
「人事に『あの女は悪い人間だからやめさせろ』と言ってきたそうです。仲のいい人事担当が教えてくれました。こんな嫌がらせが続いて精神的に限界になりました。うつで自殺も考えていたので……。当時の医療費は、夫の分とは別に私の精神科診療にもかかり、それぞれ年間100万円を超えていました」
こんなギリギリの精神状態の中で、女性は決断した。
「まだ夫は生きていましたが、長期入院の介護疲れもあって、離婚届を出しました」
当時、夫は重症化が進み今後は認知力が低下する恐れもあった。「まだ正常なうちに離婚届を出さないと、タイミング逃すかも」との焦りもあったという。夫婦の間に子どもはおらず、「義実家は子どもをとても望んでいたので、その辺からおかしくなったように思う」とも漏らしていた。
「金に狂った人は怖いと思った」
夫は離婚について特に異論はなかったようだが、「よく分かっていなかったと思う」とも女性は回想する。離婚後は義妹が夫を引き取ったが、後に「いじめられている」と夫から連絡がきたこともあった。
「ですが、間に弁護士を立てられてコミュニケーションを一切禁止されていたので、かわいそうにと同情しましたが何もできませんでした。自分の『楽』を優先したことや、自身に力がないことを、情けない、申し訳ないと自分を責めました。それと同時にやっと解放された自由だ!と思ったのも事実です」
こう本音を明かした女性。もう二度と夫の親族と関わることは出来なかった。改めて
「その親戚も金に困っているわけでもないのに、金に狂った人は怖いと思った出来事でした」
と胸中を明かした。実は親戚はその土地では名の通った資産家で、嫌がらせをしてきた義妹も実家から都内の人気住宅地に大きな家を買ってもらっていたそうだ。
「考えてみると、不動産はありましたが専業主婦だったので現金は持っていなかったのかもしれませんね」
と冷静に分析する女性。もちろん元夫とは財産目当てで結婚したわけではなく、自身が経済的に自立していたからこそ、親戚と縁を切るための離婚に踏み切れたのだろう。
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