前問で「支払われていない」と回答した人を省庁別に比較したところ、最多は「財務省」(73%)だった。次いで「厚生労働省」(52%)、「総務省」(45%)などと続いた。他方、最も正確に支払われていないのは「厚生労働省」で、比較的正確に支払われていたのは「環境省」(90%)と「内閣官房」(86%)だった。
回答者にエピソードを聞くと、
「超過勤務した分を申し出たが支払うことはできないと言われた」(農林水産省、40代)
「年度末で超勤予算が枯渇し支払えないと言われた」(総務省、40代)
「テレワークは国際会議等の理由があれば残業がつくが、基本的に認められないと言われた。実際の勤務時間で残業申請したものの、認められなかった」(財務省、20代)
といった声が寄せられた。中には「3割支給されている程度で前とまったく変わっていません。噂では、予算がないからとのことですが、予算がないなら残業させないでほしい」(厚生労働省、40代)など前述の会見発言後もまったく変化がないと訴える人もみられた。
長時間労働の原因は「質問通告ルール」の形骸化
また、国家公務員の長時間労働の原因は「国会会期中における国会議員の質問通告の遅さ」と指摘するコメントも多かった。質問通告は本来、当該委員会の2日前までにするものと与野党内で合意がなされているが、このルールが形骸化していることが度々メディアで取り上げられている。
調査回答者からのコメントにも、
「超過勤務手当が全額支払われるのは有難いが、本省の超過勤務手当は国会待機が多くをしめていると感じているので、議員の方が決まった日時までに質問を提出して欲しい。直前だとそこからスタートし、早朝大臣レク等で超過勤務になる。そういった悪循環が無くなってほしい」(防衛省、30代)
と議員に対してルール遵守を要望する声もあった。
そこで、今回の調査でも「1~3月の緊急事態宣言中の期間で質問通告2日前のルールが守られていると感じるか」と聞いたところ、85%が「そう思わない」と回答した。
さらに、質問通告ルールを守っていない議員は政党によって大きな偏りがあることも分かっている。「質問通告に遅れることが多い」とされた議員を所属政党別にみると、ダントツで多かったのが「立憲民主党」(回答数70)と「共産党」(同61)だった。以降は「自由民主党」(同5)、「国民民主党」(同3)、「公明党」(同2)などと続く。
ルールを守れない理由の一つは、国会の開催日程が2日前の時点で決まっていない、いわゆる「日程闘争」にある。回答者からも「委員会の日程が権力闘争の具となっているために、改善の効果は抑制されている。与野党間での調整による日程決定が直前では、個別の議員の方々も2日前通告を実現できないのではないか」(国土交通省、30代)と懐疑的な声が挙がっていた。
一方で「質問通告ルールを守っていることが多い」とされた議員の所属政党をみると、回答が多かった順に「日本維新の会」(回答数14)、「国民民主党」(同11)、「公明党」「自由民主党」(同各7)、「共産党」(同2)、「立憲民主党」(同1)と続いた。
河野担当相の指示があったにもかかわらず、正しく支払われていないことによって働く環境や自身の心境に起きた変化を聞くと、最多は「結局は変わらないという諦めの気持ち」(71%)だった。
次いで「支払われている他の省庁・部局をうらやましく思った」(52%)、「仕事へのモチベーションがより下がった」(42%)、「辞めたいと思うことが増えた(思うようになった)(33%)」、「転職先を探し始めた(26%)などと続いた。