はてな匿名ダイアリーに9月上旬、「『おじさん』はバカにしていいという風潮」という怒りの投稿があり注目を集めた。投稿者は、中年男性をバカにするネット上の言葉に憤り、
「そんなバカな。さすがに、男に生まれて中年になっただけでバカにされるいわれはないだろ。やめましょうよこういうの」
「こういうのにもちゃんと文句を言うことが、あらゆる差別をなくすってことに繋がるんじゃないのか?反差別の人たち、『おじさん』って言葉に無頓着すぎねえ?」
と主張している。(文:okei)
「わりと直球の差別」と猛反発
発端となったのは、あるツイートだ。セーラームーンのキャラクターに憧れて髪をブルーブラックに染めた同期が、「おじさんには見えない青(黒に見える)だから怒られないの!」と言い放ったという内容だった。これがトゥギャッターにまとめられ、はてなブックマークでも話題になっていた。
匿名ダイアリーの投稿者は最初のツイートや付いたコメントの意味を要約し、
「おじさんは目が悪くて特定の髪色を判別できない」
「おじさんはファッションに疎いので、特定の髪色を見てもそれが染められた色だと判定できない」
といった内容を「わりと直球のdiscrimination(編注:差別)」と指摘していた。
確かに、人は誰でも歳をとる。筆者もアラフィフ女性のため、中年になっただけでバカにされたのではやり切れないのもよく分かる。
もっとも、筆者としては、このツイートに付いたコメントやブックマークは、そこまで差別、侮蔑的だろうか?という気がしなくもなかった。実際、ほとんどが「(茶髪がダメな環境で)ブルーブラックにしたら意外とバレなかった」という経験談などだったからだ。ただ、差別は「している方は無自覚」というのもよくある話だ。
今の世の中「おじさん」=「強者/権威者」とも限らない
この主張には、はてなブックマークが400以上付き、投稿者の気持ちに寄り添うするコメントも少なくない。
「河村市長が金メダル齧って炎上してるときに、おじさん叩きの弊害を感じた」
「言ってる側にとっては『特定』の『悪しき』おじさんのことを指してるつもりなんだろうけど、それで済むなら差別発言し放題だしな」
他方、この場合の「おじさん」は、強者の象徴として使われているという指摘もある。それをかいくぐって好きな髪色にするという若い女性のしたたかさを讃えているだけ、という認識だろう。弱者が強者を出し抜くストーリーは古今東西ウケがいい。
ただ、今この時代で難しいのは、世間の「おじさん」=「強者/権威者」とも限らないという点だ。2015年頃、未婚で恋人もいない非正規の貧困中年男性が「キモくて金のないおっさん」と呼ばれ、「弱者男性」として話題になった。終身雇用や年功序列が崩れる中、もうおじさんが「強者」とは限らない。
そんなつらい世の中で、「おじさん」という言葉は、差別、侮蔑の言葉として、男性たちの胸をえぐるのかもしれない。「おじさん」という言葉の扱いも今後また変わっていくかもしれない。