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物流業界のDXをリードするSGホールディングス「オープンイノベーション」で新たなソリューション開発に尽力

SGホールディングス株式会社 IT戦略担当執行役員の谷口友彦さん

あらゆる業界でデジタルシフトやデータ活用の重要性が高まる中で、物流業界を牽引するSGホールディングス株式会社は更なる業務改革やデジタル基盤の強化、サービス強化に向けて「オープンイノベーション」のキーワードを掲げ、変革を進める。

業界の先駆者としてITサービスを開発・導入してきた歴史を持つSGホールディングスが推し進めるDX施策とは。IT戦略担当執行役員の谷口友彦さんに話を伺った。(文:千葉郁美)

IT技術でサービスをより良く。ITの活用は常に経営課題解決につながった

日本の物流大手の佐川急便株式会社をグループ傘下に持つSGホールディングス(以下、SGH)は、物流業界にIT技術を率先して取り入れてきたパイオニアだ。ITという言葉がまだ世間に浸透していない1985年を皮切りに、グループ傘下のシステム統括会社であるSGシステムを中心として、業界に先駆けて顧客のニーズに合わせたITサービスを開発・導入し、時代に合わせた進化を遂げてきた。

荷物がリアルタイムでどこにあるかがわかる貨物追跡サービスや、ECなどで購入した商品を受け取るときにその場でカード決済ができる「eコレクト」は、SGHグループが業界に先駆けて立ち上げたITサービスだ。

また、2005年にはプライベートクラウドの発想のもとで基幹システムをオープンシステムにダウンサイジングするプロジェクトを遂行し、グループ共通プラットフォーム化を実現。蓄積されたデータを活用・分析し、今日のデータドリブン経営を支えている。

「1985年頃の経営課題はITサービスによって顧客を獲得することでした。しかし、2005年頃には、それまで強化してきたITサービスによって、高止まりしたITコストの削減が重要な経営課題になっていました。我々にとってITの位置付けは常に”経営課題を解決する”というところにあります」(谷口さん)

2018年以降は新たなフェーズに入った。EC需要の高まりに伴い荷物量が増加し、ビジネス拡大の機会が増える一方で、労働人口の減少は避けられない。

「今後想定される荷物量の増加と働き手の減少を見据え、更なる生産性向上に向けた効率化と省力化が重要な課題です。AIをはじめとした新しい技術を活用し、業務改革とサービス強化に向け、様々な取り組みを始めています」(谷口さん)

キーワードは「オープンイノベーション」

SGHグループはDX戦略を成長戦略として位置付け、3つの施策を立ち上げた。1つはデジタル基盤となるグループの共通プラットフォームの進化。2つ目は新たなテクノロジーによる業務効率化の実現。そして3つ目は、フィジカルとデジタルを組み合わせた更なるサービスの強化だ。

「3つの施策に共通すること、それは”オープンイノベーション”です。
デジタル基盤の進化や業務の効率化は、開発パートナーやベンチャー企業等との新たな技術で連携していく。また、サービスの強化においては、物流業者のみが頑張るのではなくお客様と一体となって効率化を図っていく。オープンイノベーションによって社会課題や顧客課題を解決し、我々の事業機会につなげていきたいと考えています」(谷口さん)

3つの施策はすでに様々な形で課題解決を実現している。中でもAI -OCRにより手書き伝票を高精度で読み込むことを可能とし、さらにAIを活用した配送ルートの最適化を実現したことや、全国の佐川急便ほか協力企業とのネットワークで荷物とトラックをマッチングさせる「TMS(トランスポーテーション・マネジメント・システム)」をさらに強化させる取り組みは昨今の需要過多と人員不足という難題の緩和につながっている。

そうした一連の取り組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する『DX銘柄 2021』にも選定された。

「現在、物流倉庫内業務の自動化を進めています。例えば、荷物の基礎情報(サイズ・重量・外装・荷札情報等)を自動取得し、荷降ろし作業を自動化するロボット技術の開発を国と共に研究しています。自動化が進むことで更なる効率化、生産性の向上が期待できます」(谷口さん)

ガバナンスを効かせる独特なIT組織

テクノロジーの活用に明るいSGHグループのIT組織は独特だ。SGHや佐川急便などの事業会社にはIT人材が数名から数十名程度しか在籍せず、IT人材はグループ子会社のSGシステムに集約している。

また、それぞれが役割を明確にしている。SGHはIT戦略を作り、それに則って佐川急便をはじめとした各事業会社が具体的な施策や企画を考え、SGシステムが企画支援から運用保守までを一貫して担いながらSGHや佐川急便などに出向し、ローテーションすることでガバナンスを効かせている。

「サービスやシステムの開発をベンダー任せにする場合も多いと思いますが、我々は内製化を推進しています。また、SGシステムと各事業との距離感が近いのも特徴です。佐川急便の営業部の横にスーパープログラマーを配置して高速開発を進めたり、経営企画部と共にデータサイエンティストが情報の見える化を進めたり、輸送ネットワーク部や3PL事業を行っている佐川グローバルロジスティクスと共にロボットエンジニアが庫内作業の自動化を進めたりと、現場でスピード感のある対応をしています。
新たな技術に果敢に挑戦できるようにとR&D制度もあります。新たな取り組みを提案しやすい上に、実行すれば現場からも喜ばれるという、いい循環が生まれています」(谷口さん)

実際に、R&Dにおいて着目され、開発したことで大きな成果を上げたのが、手書き伝票を読み取るAI -OCRだ。手書き伝票のサイズ・重量といった数字情報のエントリーを手作業で実行していたが、AI-OCRによって99.995%の精度で自動化を実現。人によるエントリー作業にかかっていた時間を、月間約8,400時間短縮した。

「これからもR&Dで新しい取り組みを試していこう、という流れができています」(谷口さん)

ベンチャー企業はじめパートナーとのアライアンスを強化して新たな価値を生み出す

さらにSGHグループは新たな事業を生み出すことにも前向きだ。アクセラレータープログラムや、新たな事業の企画を自社内で募るビジネスグランプリといった取り組みを実施。アクセラレータープログラムには様々なベンチャーに応募してもらい、協働して新しい取り組みを開始している。

「既存の事業をオープンイノベーションで更なる成長を目指すとともに、パートナーとのアライアンスを強化しながら新たな価値を生み出していく。そうしたことも達成していきたいですね」(谷口さん)

様々な課題を抱えながらも、その時代の変遷に合わせて進化を続けるSGHグループは、これからも業界のデジタルシフトを牽引していくに違いない。

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