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「社会インフラの計画業務支援」に特化したAI開発を行うグリッド 経験者採用で専門知識より大事にしたいこと

グリッドの本社オフィスにて

グリッドの本社オフィスにて

2023年7月に東証グロース市場に上場したグリッドは、社会インフラの領域に特化したAI開発事業を行う会社です。現実世界のビジネスルールや物理法則をデジタル空間に再現し、ビッグデータを用いずにAIアルゴリズムで計画を最適化するのが、グリッドの開発プロセスの特徴です。

注力する社会インフラは「電力・エネルギー」「物流・サプライチェーン」「都市交通・スマートシティ」の3分野。業容拡大に向けて経験者採用を積極的に行っていますが、どんな人材を求めているのか。総務部長の藤原拓さんと、採用担当のジョン・ヒョンオクさんに聞きました。(聞き手・文:水野香央里)

最適な計画をAIシミュレーター上で導き出す

株式会社グリッド 総務部長の藤原拓さん

株式会社グリッド 総務部長の藤原拓さん

――御社ではどのような事業を行なっていますか。

藤原 当社は電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティといった国内のインフラ関連企業に対し、現場の計画業務を自動化・最適化するAIプラットフォームを提供しています。

社会の基盤を支えるインフラの計画業務は、複雑で難易度が高いものです。しかし現実には、長年担当してきたごく小人数のベテランの方々のみが長時間をかけて業務を行っていることが多く、いかに業務を効率化するか、ノウハウを次の世代にどう承継するかが各社共通の悩みとなっています。

この課題を解決するために当社が開発したのが、社会インフラのオペレーションを最適化するAIエンジンです。実際のビジネスルールや物理法則などを踏まえた現場のオペレーションを「デジタルツイン」と呼ばれるデジタル空間に再現し、設定したKPIに応じた最適な計画をAIエンジンで導き出します。

――計画業務にAIを使うことでどんなメリットが生まれるのでしょうか。

藤原 これまで人の手で数時間から数日かけて行っていた計画業務を数分間に短縮したり、人手では実現困難であった複数のシナリオや計画の組み合わせを検討したりすることが可能になり、現場の計画担当者の負荷が大幅に減ります。

お客様からは、計画業務が楽になるだけでなく、「こういう考え方もあるのか」と新しい気づきがあったという声もお聞きします。計画最適化はエネルギー消費量の削減にもつながりますので、企業のコスト削減やCO2の排出量削減にも貢献できます。

AIより事業や業務の「ドメイン」知識を優先

株式会社グリッド 採用担当のジョン・ヒョンオクさん

株式会社グリッド 採用担当のジョン・ヒョンオクさん

――現在、どのような人材の中途採用に注力されていますか。

ジョン 当社は東証グロース市場に上場して半年ほどの会社で、従業員数は100人を超えたところです。現在はAIコンサルタントやデータサイエンティストはもちろん、セールスや管理部門まで幅広く募集しています。

仕事の流れで見ると、まずはセールス部門がお客様との最初の接点を設け、展示会や企業に出向いて商談を獲得して見積もりを出す、といった提案のベースを作ります。

次にAIコンサルタントが、フロントに立つエンジニアとして営業担当とともに提案を作り上げます。その際には、お客様からヒアリングした顕在課題だけでなく、潜在的な課題についても、「当社であればこういう技術で、こういうソリューションを提供できます」といった提案を行います。

成約後は、エンジニアリングチームのデータサイエンティストがアサインされ、AIコンサルタントとともにプロジェクトチームを立ち上げ、具体的なソリューションの開発と提供を行います。

――AIコンサルタントの役割の範囲は広いのですね。

ジョン AIコンサルタントは、お客様の業務理解はもちろんですが、社内のエンジニアが書いたコーディングや分析結果などのアウトプットを理解したうえでお客様に説明しなければならないため、幅広いスキルが必要になります。

とはいえ、最初から全部完璧にできる人は少ないので、資質を持った人を採用しつつ、知識や技術で足りない部分は、入社後にデータサイエンスやAI技術の研修を受けてもらったり仕事を通じて学んでもらったりしながら、スキルセットを持つ人材を増やしていくことが会社として大事なことだと考えています。

――現在はどんな経歴の方が働いているのですか。

ジョン 当社のお客様になるような企業の現場で働いた経験がある方で、社会インフラにかかわる企業の出身者が中心です。現場のルールをよく理解していなければ、お客様を支援することはできないからです。

AI企業というと、データサイエンスの技術や知識を主軸に考えるイメージがあるかもしれませんが、当社ではまず事業や業務領域であるドメインの専門知識を持っていることを重視しています。

「問題や課題を解く」ことに直接関わりたい人が集まっている

グリッド社員のバックグラウンドは多様かつグローバル

グリッド社員のバックグラウンドは多様かつグローバル

――採用にあたって苦労されていることはありますか。

ジョン そもそも採用のターゲットになる人の絶対数が少ないことです。「社会インフラ系の企業に2、3年勤めていて、自分でデータ分析について勉強しています」といった人が理想なのですが、そういう人はなかなかいません。

一方で、社会インフラ分野のお客様向けに大きなプロジェクトを積極的に手掛けている会社はグリッド以外にあまりないので、志向がマッチした人からは「まさにこれがやりたかった!」と言われることもあります。

――これがやりたかったとは、どういうことなのでしょうか。

ジョン 大企業の場合、プロジェクトを外部ベンダーに委託することも多く、社内では 、肝心の「問題や課題を解く」ことに関われない場合も少なくありません。そういう仕事をしたいと思っていた人には、グリッドが手掛けるプロジェクトはとても響くようです。

社員の中には、現場でのさまざまな問題を経験して、問題を解決したいとか、優れた仕組みを作りたいといった自分の夢を持って入社してきた社員がたくさんいます。同じような思いを持っている方に、ぜひグリッドに入社いただき、その思いを社員と分かち合ってもらいたいと思っています。

――人材の採用促進や定着のために行っていることはありますか。

ジョン 現在は社員の増加に伴い、新たな制度を試行錯誤しているところです。新入社員へのサポートとしては、最初の3ヶ月間は世話役の先輩が付き添って指導する「Buddy制度」を設けました。新入社員以外にも、若手社員が先輩から指導を受けられる「メンター制度」も導入しています。

業務に必要な機械学習や数理最適化の基礎的な知識の取得については、「IO DOJO(アイオー・ドージョー)」というプログラムを設けています。また、有名な大学の先生方にアドバイザーになってもらい、月1回レクチャーを受けられる講座を作ったりしています。

エンジニア向けには「競技プログラミング」への参加を奨励し、勉強会も業務時間として認めています。エンジニアが喜ぶ研修もたくさん実施しているところなので、こういった点も当社で働く魅力だと思います。

このほか、フレックスタイムによる勤務時間の調整や休暇の取得なども、制度として整っているだけでなく気軽に使うことができますので、仕事をしやすい環境が整っていると思います。

「人間性を大切にする文化」を大事にしていきたい

グリッドの本社オフィスの最寄りは表参道駅

グリッドの本社オフィスの最寄りは表参道駅

――スキル以外に、人材に求める人物像はありますか。

ジョン 当社はOur Valueのひとつである「GRID personality」として、高い人間性と高い専門性の両立を掲げています。社内には博士号を持っているなど高学歴の社員や大手企業の出身者も多いですが、専門性の高さに関係なく、謙虚さを大事にしてチームとして他の社員と力を合わせて働く人になって欲しいと考えています。

理由のひとつは、当社のプロジェクトは規模が大きいことに加えて、難易度もとても高いものになるからです。誰もやったことがない課題に取り組むので、「これまであったものを持ってきて適用して終わり」とはならない世界です。ひとりではとても課題を解決することはできません。

また、課題の解決には多くの業務、多くの専門性が必要です。「ひとりで3ヶ月アプリケーション作って納品して終わり」というプロジェクトではないので、チームで仕事をする意識が高いですし、コミュニケーションもとても大事にしています。

実際に働いている社員は「素直で優しい」社員が多く、お客様はもちろん中途入社の社員からも「質問や相談がしやすい」「きちんとサポートしてくれる」という声をよく聞きます。

人間性を大切にする文化があるからこそ、強い信頼関係を築くことができているのだと思います。今後社員が増えて多様性が増していっても、この文化はグリッドで働く魅力として守っていきたいと考えています。

――今後どのような戦略で会社を成長させていこうと考えていますか。

藤原 成長戦略の1つ目は、既存のお客様との取引を増やすことです。インフラ産業は規模が大きく、ひとつの企業の中に複数の計画業務があります。複数の計画業務を当社で受注できるようにしていくことは重要な課題です。

2つ目は、これまでの経験と実績を新規のお客様向けに提供していくことです。電力需給計画や配船計画といった、過去の経験と実績が豊富な分野について横展開によって収益を拡大するとともに、お客様を増やすことで少数の企業に頼らない安定した収益基盤の構築を進めています。

加えて、将来的には当社の技術である「インダストリークラウド」(特定の業界、業種に合わせたサービスを提供するクラウドソリューション)と実績を強みに、海外に進出していくことも視野に入れています。

このような成長戦略を実現するためには、社員の数をしっかり増やしていくことが欠かせません。AIコンサルタントやデータサイエンティストを中心としつつ、幅広い職種で採用活動に力を入れ、着実に増員することで会社として成長していきたいと思います。

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