人事担当に「デジタル人材」を配置するナイル 完全オンライン化で「会わずに年間80人採用」 | キャリコネニュース
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人事担当に「デジタル人材」を配置するナイル 完全オンライン化で「会わずに年間80人採用」

ナイルの採用チーム。前列中央が渡邉さん。メンバーの多くはDXのノウハウを持つ

ナイルの採用チーム。前列中央が渡邉さん。メンバーの多くはDXのノウハウを持つ(画像提供ナイル。以下同じ)

経営課題としてあらゆる業務のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が求められている昨今、人事業務も例外ではありません。長年の慣習を見直すために、人事担当者がデジタルで何ができるのかを学びつつある会社も多いのではないでしょうか。

デジタルノウハウを強みに、自動車産業DX事業とマーケティングDX事業を行っているナイル(東京・東五反田)では、人事部門にデジタル手法の専門人材を配置することで成果を上げています。同社で採用グループのマネージャーを務める渡邉慎平さんに話を聞きました。

採用プロセス全体のDXで社員増を実現

ナイルは「採用プロセスの完全オンライン化」を実現

ナイルは「採用プロセスの完全オンライン化」を実現

――ナイルではコロナ禍でも、積極的に人材採用を続けてきたそうですね。

当社は現在、個人向けカーリースのオンラインサービス「おトクにマイカー 定額カルモくん」などの新規事業に力を入れており、これまで行ってきた企業のデジタル化支援事業やウェブメディア事業とともに、業績が大きく伸びています。

これにあわせて、採用チームでは多くの人材採用を行っています。2019年には150名ほどだった社員数は現在250名を超えているので、100名は増えていますね。そのほとんどは直接顔を合わせることなく、オンラインだけで採用しています。

――採用プロセス全体のデジタル化が済んでいる、ということでしょうか

応募から入社までに行う3回の面接は、原則としてすべてオンラインで行いますし、オファー面談や内定通知のやり取りも、全てデジタル化しています。ただし、一度は会社を見ておきたい方などには、希望に応じてご来社いただくケースもあります。

また、1次面接と2次面接の間に「適性検査」や「ワークサンプルテスト」「リファレンスチェック」「カルチャーアンケート」などを行いますが、これもすべてオンラインです。

ワークサンプルテストとは、入社後のポジションごとに実際の業務をオンラインで行ってもらうものです。例えばセールス職の場合、オンラインで商談を行ってもらうことで、入社後の業務に対する認識のギャップがないか確認してもらっています。

採用オウンドメディアで成果を上げるコツ

採用データを可視化して着実な改善に結びつける

採用データを可視化して着実な改善に結びつける

――採用活動のDXとしては、他にどんな領域がありますか。

いわゆる「採用広報」や「採用マーケティング」があります。私はもともと企業のデジタル化支援事業でコンサルティングチームのマネージャーをやっていたのですが、3年前に人事に異動して、採用広報を含む採用全体のDXを推進してきた経緯があります。

その経験を活かして、2018年から「ナイルのかだん」という求職者の方に向けた採用オウンドメディアを運営しています。現在150本以上の記事を公開していますが、そこでは新規ユーザーと再訪問の割合や読了率などのデータを把握して、改善につなげています。

また「ここまで記事を読んだらポップアップを出す」といった施策など、データに基づいた求職者体験のデザインも進めています。このほか、社内でSNS道場のような研修をして、社員の情報発信を促す取り組みをすることもあります。

――採用オウンドメディアは数年前に話題になったものの、負担の割に成果が上がらないと撤退する会社が少なくありません。続けるコツはありますか。

よくあるのが、記事を書いて更新していけば、採用広報や採用マーケティングになっていると考えているケースです。これでは会社側のアクションで終わってしまい、本来の成果が上がらないおそれが高いです。

当社では、求人応募数をゴールとして、それを増やすための手段を逆算した「KPI(重要業績評価指標)ツリー」を作っています。そこでは、自社採用サイトへのアクセス数や、そこに送客する採用オウンドメディアのセッション数などを、指標として設定しています。

KPIを見ながら、それぞれの目標を達成するための課題を設け、達成するにはどのような記事を出す必要があるのかなどの検討をし、実行に移しています。結果として、この1年で採用オウンドメディアのセッション数は159%、自社採用サイトの応募数も134%も増えました。また、選考期間を7営業日短縮したこともあり、面接者の承諾率は10%近く改善しています。

組織開発にもデジタルデータを取り入れる

集客から面接、採用管理、適性検査に至るまでデジタルツールを活用

集客から面接、採用管理、適性検査に至るまでデジタルツールを活用。写真左は取締役人事本部長の土居健太郎さん

――DXを進めるにはデジタルツールの導入だけでなく、KPIによる管理まできちんと行わないと、成果が上がっていかないということですね。

もちろんデジタル化によって初めて得られるデータもあるので、使い方が分からないと戸惑うのは仕方ないと思います。当社はもともとデジタルマーケティングを事業の強みとしている会社なので、採用のオンライン化だけでなく、データ化やKPI管理にも早い段階から取り組んできました。

取締役人事本部長の土居健太郎は、もともとデジタル化支援事業の責任者やウェブメディア事業の立ち上げ責任者を経て、2019年から人事担当役員の専任となって組織全体を見るようになったという経緯があります。

つまり、人事がデジタル化するとか、人事担当者がデジタルを覚えるというのではなく、そもそもデジタルをやってきた社員が、人事として組織を作っているというところが、他の会社にない特徴なのかなと思います。

――人事として、採用以外にデジタル化しているものはありますか。

例えば、組織開発でもデジタルを活用しています。四半期に一度、社員向けにオリジナルのウェブアンケートを実施していて、項目ごとに目標数値を設定し、そのスコアリングデータを継続的に見ながら、優先順位をつけた改善活動につなげる取り組みも行っています。

社員アンケートというと、単純に社員の要望をヒアリングする方法もありますが、それに応えることで事業は伸びるのか、強い組織が作れるのか、といった視点で見ると、現場で求められることと経営がやりたいことに乖離が生じる場合もあります。

あくまでも事業を伸ばせる力のある組織に育てるために、何をしなければならないのか、という視点でスコアリングを設けて、そのための課題解決をするようにしています。

一方で、上司とのコミッション設定はきちんと握れているか、入社前に提示されたオファーが守られているか、自分のキャリアがきちんと見えているか、などの問題には、会社として責任を持って対処していかなければなりません。そのため、当社のアンケートはすべて実名で行っています。そこが一般的なサーベイサービスとは異なっているかもしれません。

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