生活保護の申請書作成、オンラインで可能に 役所の”水際作戦”に対抗 | キャリコネニュース - Page 2
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生活保護の申請書作成、オンラインで可能に 役所の”水際作戦”に対抗

同団体によると、緊急事態宣言が発令した4月以降、12月までに385件のSOSがメールフォームに寄せられた。中には「今日、生活する金がない」という内容のものもあり、スタッフが駆け付け、宿泊費や食費を渡すケースもあった。

広報担当者は、直近の印象について「困窮している方の質が変わってきました」と語る。

「いわゆる”路上生活者”のイメージがあると思うのですが、そういった分かりやすいケースは減っていて、『今日初めて路上に出た人』『昨日解雇されて寮を出されたばかりの人』といった人が増えています」

また、これまでは中高年の人が生活困窮者の大半を占めていた一方で「最近は10代を含む20~30代の人が急増しています」と傾向を明かした。

フミダン誕生の背景については「以前からメールフォームで支援することはどの支援団体も考えていました」と話す。だが、困窮者の年代が高く、インターネットに関するリテラシーが追い付かないため難しかった。そうした状況がコロナで変わったという。

「(生活困窮者の中でも)インターネットを使いこなす方が増えています。それならば、ウェブサービスにした方が親和性は高いと考えました」

「生活保護は”非要式行為”。申請は口頭でもコピー用紙の裏でもいい」

では、なぜ福祉事務所の窓口でなく、ウェブ上で申請書を作成する必要があるのか。同団体の担当者は、生活困窮者に申請用紙を渡さない“水際作戦”が背景にあると話す。

「申請書を渡さないよう内部で規約があると聞きます。理由はさまざま考えられますが、予算的なものだったり、ケースワーカーがこれ以上仕事を増やされたくないのもあるでしょう」

また、福祉に関わる人の間にも「自業自得だから」「もっと頑張って」などと生活困窮者に対して偏見を持つ人も一定数いる。いざ窓口に申請に行っても、心を折られた後に申請書をもらえずに帰らされる人が後を絶たないという。

だが、担当者は「窓口で生活保護の申請用紙をもらう必要はありません」と強調する。

「生活保護は”非要式行為”なので、生活保護の申請意思が示せれば口頭でもコピー用紙の裏でもいいんです」

そこで、フミダンでは申請に必要な項目をウェブサイト上に設定することで、希望者が書き入れるだけで簡単に申請用紙が作れる方法を取り入れた。同団体ではこれまでにも、担当者が福祉事務所に同行することで申請を手助けする活動などをしていたが、「マンパワーでは限界があった」とする。

今回のサービスでは、出力した申請用紙を自ら福祉事務所に持参する必要があるが、事務所側に「申請を受け取らない選択肢はない」という。申請用紙がもらえなくても、こちらで用意できれば“水際作戦”をかいくぐれるとしている。

一人で持参することが不安な人は、同団体のメールフォームを通じて相談することも可能だ。基本的に対応地域は都内だが、地方であっても現地のNPOを紹介することができる。

「携帯電話や光熱費を滞納している人は赤信号」

担当者は「新型コロナウイルスの影響で、生活困窮者は目に見えて分かるくらい増えている」と前置きした上で、「どこからが困窮なのか」といったラインが分かりにくいのが問題、と指摘する。

「初めて路上に出る方の中には『まだ自分は頑張れる』という人も多いです。特に、働く意欲もあって、人並みの能力もある方。『自分が困ったことを認めたくない』という方が多いですね」

だが、同団体では焦って仕事を探すよりも、一度体制を整えて職探しをすることを勧めている。実際に、生活保護を受けずに職を見つけたものの、一か月で解雇になり、また相談に戻ってきてしまう人もいた。

担当者は「生活保護はネット上でいろいろ言われているが、ただの社会制度なので、普通に使ってほしい」と話す。

「『まだ頑張れる』っていうラインの手前でアクションしてほしいです。具体的には、携帯や光熱費などが滞納することは赤ライン。前月に支払えず、2か月まとめて支払いをしている人などは赤信号なので相談してください」

すぐに生活保護の申請が降りなくても、申請書を作成して心の準備をしておくことは有効だという。同団体では12月29日~来年1月3日の間、都内23区の福祉事務所に限り、オンライン上で作成した申請用紙をそのままFAXで送信できるサービスを試験運用するとしている。

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