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世界に進出する日本の「鉄道ビジネス」 欧米の牙城を崩す快挙と、中国メーカーの影

タイの都市鉄道は東芝を採用

タイの都市鉄道は東芝を採用

世界規模で年間24兆円市場といわれ、欧米大手3社が独占してきた鉄道市場。しかし日本も負けてばかりはいない。2015年5月11日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、世界で活躍する日本の鉄道車両を取材し、鉄道ビジネスの現在を紹介した。

タイの首都バンコクでは、大渋滞が問題に。そのため都市部と郊外を結ぶ新しい駅が作られる予定で、総合商社の丸紅と東芝が共同でプロジェクトを進めている。受注したのは都市鉄道で、車両や信号など運行システム一式だ。

都市型の通勤車両1両だけでも約1億円

受注までには大きな壁もあった。丸紅の鈴木雅雄さんによると、タイに入っている高架鉄道や地下鉄は、すべてドイツのシーメンス製。今回の都市鉄道もシーメンスが受注して「すべて独占したい」という目論みがあったようだ。

シーメンスは鉄道車両で世界シェア12%の巨大企業。2013年秋、この牙城を崩し日本勢として初めて受注に成功した。プロジェクトにはJR東日本も参画し、日本のお家芸ともいえる定時運行のノウハウまで提供する。鈴木さんは今後の展望をこう語る。

「タイ以外にも、これからインフラ整備を進めて行く国がたくさんある。そういう所で、鉄道のビジネスチャンスはたくさん出てくると思っています」

日本経済新聞社編集委員の後藤康浩氏によると、都市型の通勤車両1両の値段は約1億円で、1編成10億円。1車両3億円の新幹線の場合、30~40億円と非常に大きなマーケットになり、政府の期待も大きい。

製造にかかわる関連企業は、日立や川崎重工をはじめとする大手から、部品製造、中小の下請企業までと裾野は広い。丸紅の交通インフラプロジェクト部の須藤一夫さんは、タイでの快挙をこう語った。

「日本の車両を走らせたいという関係者、官民合わせた全員の意気込み、思惑が一致して、執念で取り切った」

高い評価を誇る日本の鉄道ビジネスだが

アメリカでは首都ワシントンの40年ぶりの新車両導入にあたり、川崎重工が車両を製造した。デザインは日本の工業デザイナー、宇田川信学氏だ。

宇田川さんは、かつて「世界最悪」といわれた治安の悪いニューヨークの地下鉄を、車内デザインの力で安全に生まれ変わらせた実績がある。車両も落書きをすぐに落とせるよう、特別な工夫が施されている。

そのほか番組では、日立製の高速鉄道「クラス395」が、イギリスの大寒波で故障したフランス製のユーロスターの乗客5万人を救出したことにより、国民的な信頼を勝ち得たエピソードも紹介した。

MCのシェリーが「日本の課題」について訊くと、後藤氏は「価格が高い」ことを挙げ、「それに、世界の鉄道市場は風雲急を告げています」と切り出した。

中国政府は鉄道の海外輸出に力を入れ始めている。中国の大手鉄道メーカーの南社と北社が今月合併し、売り上げ3.7兆円規模となった。世界の鉄道ビックスリーを上回る超巨大企業が生まれたのだ。

竹田圭吾氏「心配な面」にAIIBの存在をあげる

ジャーナリストの竹田圭吾氏は、この動きについて、「心配いらないと思う面と、心配な面」の両方あるとしたうえで、4年前に中国・浙江省で起きた追突事故を挙げ、安全面での信用が低く、日本の競争相手にはならないとほのめかした。

心配な面は「輸入プロジェクトにかかる資金調達」の強さだ。中国が提唱し現在57カ国が参加する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の存在があり、「例えばそことセットでお金を貸しますから契約してくださいと言われると(日本は)不利な面があるかも」と懸念を示した。

すでに鉄道の国内需要は多くは望めず、海外への市場拡大は鉄道業界の悲願だろう。番組を見て、日本の鉄道の安全性と品質の良さ、定時運転のノウハウは、いまのところ他国に負けない力があるはずだと感じた。市場争いは熾烈を極めることだろうが、日本には頑張ってもらいたいと思う。(ライター:okei)

あわせてよみたい:「アジアの大渋滞」の解消に日本企業が一役買う

 

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