というのも孔子学院は、格安で中国語教室を開いているからだ。筆者の通った武蔵野大学孔子学院では、ネイティブ講師の授業が週1回半期で3万円台。民間の語学教室に比べると1〜2万円程度安かった。
神戸新聞によると、「孔子学院は2004年以降、中国語や中国文化を広げるため、中国政府の出資で設立。中国側の報道によると、160超の国・地域で約550カ所が開設されている。現地と中国の教育機関が共同運営する形を取り、中国側が中国人教師を派遣している」もの。
中国政府公認の教師なら、語学授業はしっかりしているはずと考え、初心者向け講座に申し込んだ。参加者は5名で、筆者のほかは主婦と会社員だった。最初の授業では、教師が挨拶した後、日本語で自己紹介タイムがあった。
当然、定番の受講理由と「中国にいったことありますか?」が聞かれる。隣に座っていた女性は、この質問に「はい!台湾にいきました」と元気よく答え、教師は「台湾楽しいよね」と流暢な日本語で応対していた。やはり、孔子学院では「一つの中国」前提で発言しないといけないのか?
しかし、それから半年間、少なくとも授業中には、さりげなく受講生の勤務先や人脈などを聞き出してスパイ活動に勧誘してくるそぶりや、中国共産党を露骨に賛美するような発言には出会わなかった。日本のネットでは「スパイ養成所」扱いされていることもあり、怖いもの見たさもあったのだが、筆者の場合は単に中国語の発音が上手くなっていくだけだった……。
ちなみに、使われていた教科書は、Amazonや書店注文で簡単に手に入る『漢語口語速成・入門篇』(北京語言大学出版社)。内容は「昨日はどこにいきましたか」「料理を注文しましょう」程度だった。
受講中、さりげなくほかの受講生に「ネットの評判」を知っているか訊ねてみたが「へえ、そうなんですか」と、そもそも「スパイ組織」なんて風評を、まじめに取り合っている雰囲気もなかった。
ちなみに、筆者は半年で通うのをやめてしまった。週1ペースでは語学の上達に限界があると思って、他の学校に通うことにしたからだ。