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「ふるさと納税」で流出元自治体が悲鳴 返礼品加熱、寄付先自治体の収入になるのはわずか「4割」

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ますます加速している「ふるさと納税」。2020年度は6724億9000万円、2021年度は8302億4000万円と強烈に伸びている。しかし、ここまで伸びると、制度の「負の側面」が目立ってきた。本来なら「税金を受け取るべきだった自治体」が悲鳴をあげているのだ。東京都荒川区神奈川県川崎市は「このままの状態が続くと、市民の皆様に提供する行政サービスに影響が出るおそれがあります」と危機感を表明している。(文:昼間たかし)

加熱しすぎた返礼品競争

2021年度、ふるさと納税の収入が最も大きかった都道府県は北海道の1217億4700万円だった。2位の宮崎県の463億6500万円を引き離して圧倒的だ。

北海道の自治体でもっとも寄付額が多かったのは紋別市で、その額は152億9700万円にのぼった。経費を差し引いた収益は約61億円で、同市の2021年度の市税歳入の26.8億円より多いレベル。コロナ禍での景気後退や漁業の不振で税収が減少している同市だが、この制度で子育て、医療の充実がなされていて、文字通りふるさと納税に救われた街となっている。

紋別市への寄付額が増えた理由は、「返礼品」を見てみればすぐわかる。ホタテ、いくら醤油漬け、ズワイガニなど、豪華な海産物が並んでいるからだ。結婚式でもらうカタログとか、クレカ・ポイントの商品とかと似たような感覚だろう。タダでモノがもらえるなら「利用しなければ損」なのである。

さて、恩恵に預かる自治体があるから一方で、当然減収する自治体もある。2022年度に「ふるさと納税」で流出した額は、神奈川県横浜市の230億900万円。以下、愛知県名古屋市の143億1500万円、大阪府大阪市の123億5900万円と続く。都内では世田谷区が最多で、83億9600万円に及んだ。

もちろん、こうした都会の自治体が、ジャブジャブのカネ余り状態なら問題ない、しかし、都会は都会でカネがかかる。世田谷区では昨年10月の区報「せたがや」で、4ページにわたってふるさと納税を特集。2021年度の流出額が70億円を越え、学校2校分の改築費になっていること。流出が区民税額の5.8%に達しており、住民サービスや事業の先送りも考えられると説明した。ちなみに2015年度時点の流出額は2億6000万円で、6年で35倍になったというのだから、危機感を抱くのは当然だ。
 
もともと、ふるさと納税は地方と大都市の格差是正、人口減少地域での税収減少に対処するため、2008年に始められた制度だ。

しかし、その後ポータルサイトの登場などもあって、「豪華な返礼品競争」が過激化してきた。2015年には石川県加賀市が、DMM創業者の出身地というこじつけで、1万円寄付をすれば5000円分のDMMマネーが返礼品としてもらえるというキャンペーンを打ち出し、7日間で5300万円もの寄付を集めた。

その返礼品合戦の最先端をいっていたのが大阪府泉佐野市。同市では格安航空会社ピーチの航空券を返礼品としてラインナップ。2018年には497億円を集め、アマゾンのギフト券まで展開した。今年はNFTアートが返礼品として登場している。

ようは、「うちのほうがリターンが大きいから、こっちに寄付してよ」ということなのだろうが、結局あまりの過熱ぶりに2019年、「返礼品は寄付額の3割までの地場産品だけ」というルールができたぐらいだ。

寄付額の6割が「経費」で消滅

前述の世田谷区広報は、「返礼品をもっと豪華にして、区へのふるさと納税を増やしたほうがいいのでは?」という質問に対し、こう返答している。

「区では、ふるさと納税の本来の趣旨に立ち返り、「返礼品(モノ)」をきっかけとするのではなく「寄附の使い道(コト)」への共感をきっかけとした寄附を募っています。世田谷区にもふるさと納税ができます」

確かに理念は立派かもしれないが、ふるさと納税制度の実態は、せいぜい「使わないと損する、特殊通販サイト」だ。いくつかあるふるさと納税のポータルサイトを見ていても、「寄付でもらえる豪華賞品カタログ」という感じだ。サイトには「寄付先自治体の税金の使いみち」が具体的に記載されていることは珍しく、使いみちまでチェックして寄付している人は少数派だろう。

ふるさと納税は制度を理解して、寄付先(返礼品)を選んで、申請をして……という地味にめんどくさい作業をした人だけにメリットがあり、それをしない人が実質的に「損」をする仕組みなのもムカつく。ようは、ふるさと納税のカタログを眺めて返礼品を選ぶ余裕・時間のある人たちが得をして、余計な「仕事」をする暇のない庶民は大損となるのである。

そもそも、ふるさと納税は、従来型の納税に比べて、自治体の使える総額がどうやっても減ってしまう仕組み。泉佐野市によると、標準的な自治体でも収入となるのは寄付額の「4割」にすぎない。その理由は、寄付額の6割がふるさと納税の経費として消えるからだ。標準的なケースだと内訳は、返礼品に30%、送料に平均10%、ポータルサイトの手数料平均10%、委託料5%、その他経費5%で合計60%程度だという。

2021年の寄付額がおよそ8000億円だとしたら、その6割ということは4800億円が「経費」に消えてしまう。「ポータルサイトの手数料」が10%としたら、それだけで、ざっくり800億とかいうレベルになっているわけだ。それにしても、なぜ6割が「消える」想定で問題ないとされているのか。それなら最初から、そのぶんの税額をカットしてくれよ……。

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