「有休中に会社から業務メールの確認指示」――これって労基法違反じゃないの? 弁護士が解説
もうすぐゴールデンウィークがやってくる。5月2日と6日に有給休暇を取得して10連休にする人もいることだろう。仕事のことなど忘れてゆっくり羽を伸ばしたいと考えている人も多いのではないだろうか。
有休中であれば、仕事をする必要はもちろんない。しかし、中には会社からメールを確認するよう要求される人もいるようだ。はてな匿名ダイアリーには4月13日に、有休中も業務メールを確認すべきかどうか悩む疑問が寄せられている。
労基法違反と見なされれば「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」
投稿者は、発熱で有休を取得したところ、会社から電話がかかってきて、「メール見てないのか」と言われたそうだ。投稿者自身も普段は「メールくらいチェックしろよと思ってしまうタイプ」だという。しかし、最近、有休の買い取りに関する記事を読み、「有給休暇は労働からの解放を目的としている」という記述を読んで疑問に思ったようだ。
「業務メールのチェックは労働からの解放に反する気もするので何が正解なんでしょうか」
実際のところ、法律ではどうなっているのだろうか。労働問題に詳しいアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士(東京弁護士会所属)に聞いた。
岩沙弁護士はメールの確認は業務にあたるため、「有給休暇中にこれを強制することは当然できません」と指摘。しかしながら、有休中に業務命令したことを直接罰する法律はない。だが、労基法違反と見なされれば事情も変わってくるという。
「労基法119条では、有給休暇をとらせなかった場合には『6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金』が罰則として定められています。『有休中に業務命令=有休をとらせない』と評価され同条違反になる場合もあるでしょう。また、労基法136条では『有給休暇を取得した労働者に対して不利益な扱いをしてはならない』と定められているため、有休中の業務命令に従わなかったことを理由に不利益な扱いをした場合は、同条に違反すると評価できる場合もあるでしょう」
指示に従ってしまった場合は「有休の再取得」を
では、従業員が会社の指示に従って業務を行ってしまった場合、その時間はどのように取り扱われるのだろうか。
「有休中は労働義務がないので、業務をする必要があるのであれば双方の合意で有休を取り消して、別の日に有給を再取得できるようにする必要があります。また、労使協定で定めれば時間単位の年休という制度も可能であり、有休日に労働した時間を他の日に振り替えてもらう手段も考えられます」
ただし、有休中にメールチェックなどの業務にあたった場合、その日を有休扱いにしたままで、業務時間分の賃金を別に要求するのは難しいという。
有休取得日に業務命令されたという相談はほとんどないというが、こういった事態にならないために会社はどのような点に考慮すべきなのだろうか。岩沙弁護士は、
「そもそも会社には誰かが休暇を取った時でも会社の業務に支障が無いような体制を確保しておく責任があります。このような体制を作り、有休中の従業員に指示をすることは避けなければなりません。代替要員が確保できず出勤させる場合は有休を取り消して、別途取得させることが必要です」
と語っていた。
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