ストレスチェック制度、6割の医師が「効果ない」 重要なのは企業が職場改善をできるかどうか
改正労働安全衛生法に基づき、2015年12月から「ストレスチェック制度」がスタートした。従業員50人以上の事業所に、医師・保健師等によるストレスチェックを義務付けるという制度だ。
ストレスチェックにより、従業員は自分のストレスがどのような状態にあるのかを知ることができ、ストレスが高い場合は医師に助言をもらうなど、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」の効果を狙うものだ。
しかし、医師はその効果を疑っているようだ。医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を運営するメドピアは、会員医師を対象にアンケートを実施(pdf)。なんと6割以上の医師が、ストレスチェック制度は「効果がない」と回答している。
「客観的にメンタルヘルスを把握できる」と評価する声も
調査はメドピアに会員登録する医師を対象に8月3日~9日に実施。4031人から回答を得た。回答の割合を見ると、「どちらかと言えば効果はない」が45.3%、「どちらかと言えば効果がある」が35.6%、「まったく効果はない」が16.8%、「かなり効果がある」が2.3%という結果となった。
効果があると回答した医師のコメントは以下のようになっている。
「これはストレスチェック自体の効果ではなく、ストレスチェックを行うことでの本人自身や管理者に対する啓蒙を促す効果はあるかと思います」(40代、心療内科、男性)
「セルフチェックで客観的にメンタルヘルスについて把握できますし、それをもとに早めに産業医に相談もできます。そして、うつなど発症以前に対応もできるのではないかと思います。なにより、こういったことが周知されていくことが、メンタルヘルスの啓発普及になると思います」(50代、精神科、男性)
ストレスチェックを行うことで、従業員や雇用者にメンタルヘルスに対する意識を高める効果があるとしている。
「自己申告制なので本当に抑うつ状態の人がすり抜ける恐れあり」
一方で、「どちらかと言えば効果はない」と「まったく効果はない」の回答を合わせると62.1%に上る。6割の医師が「ストレスチェックは効果がない」と評価していることになる。
その理由として、以下の声が紹介されている。
「一次予防というなら、職場の人と仕事のマネジメントの問題であって、健康の問題ではない」(60代、呼吸器内科、男性)
「やってみるとわかるのですが完全に自己申告制なので、『私は会社のせいで病気になった!休ませろ!』タイプの人が引っかかって、本当に抑鬱状態の人がすり抜ける恐れが大いにあり・・・」(30代、一般内科、女性)
「この制度は、従業員のストレス蓄積を事前に知り対策をすることよりも、職場の管理者のマネジメント能力を評価するという側面の方が強く出そうだ」(50代、一般内科、男性)
また、「ストレスチェック後の職場改善の対策が無い限り、一次予防にはならない」などという指摘も多い。検査結果を受けて企業がどう対応するかがやはり重要だろう。ストレスチェックは始まったばかりの制度である。働く人のメンタルヘルスの改善に役立つかどうか、今後が注目される。
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