赤旗「小林多喜二がゲームで人気」にファン反発 「キャラクターと政治を近づけないで」
歴史上の人物が現代風のイケメンキャラクターとして登場するゲームは数多くある。ブラウザゲーム「文豪とアルケミスト」(DMMGAMES)もその一つ。近代日本の文豪をキャラクターにしたシミュレーションゲームで、芥川龍之介や太宰治といった文豪たちを転生させ、能力を開花させて戦わせる、という内容だ。現在、女性を中心に人気を博している。
『蟹工船』などのプロレタリア文学で有名な小林多喜二も同作に登場する。多喜二は、戦前に共産党員として活動し、特高警察による拷問の末に死亡した。作中ではロングコートを羽織り、剣で戦うキャラクターとして登場。攻略Wikiによる「好きな文豪ランキング」では、荻原朔太郎や島崎藤村を抑えて1位を獲得するほどの人気だ。
こうした中、日本共産党が発行する「しんぶん赤旗」は、3月17日「小林多喜二 ゲームで人気」という記事で、多喜二がゲームのキャラクターとして親しまれていることを報道した。記事の中では、小林多喜二ファンが実際に著作を読んだり、ゆかりの地を訪ねたりしたということが紹介されている。
ところが、この記事に対し、一部のゲームユーザーが「共産党による小林多喜二の政治利用」だとして反発する事態になった。
「史実ならまだしも二次元など『作品』に出てくる多喜二を引き合いに出すのはどうなのさ」
ツイッターでは、記事を読んだ一部のファンから「キャラクターと政治を近づけないで」という声が挙がった。
「政治色濃い物と絡ませるとろくなこと無いから本当にやめて。別に誰がどの政党を応援してようが勝手だけど、キャラクター巻き込まないで」
「とにかくキャラクターと政治を近づけないでほしい。(中略)もちろん多喜二に限らず他のキャラも」
ゲームのキャラクターはあくまでもフィクションとしてのキャラクターであり、史実とは異なると力説する声もある。放っておいてほしい、ということのようだ。
「たのむから文アル多喜二サンと日本共産党を一緒くたにしないで欲しい。ゲームはゲームだろう!!!と言いたい」
「(赤旗に)文アルの多喜二が触れられていると今知り気分がすこぶる悪い。史実ならまだしも二次元など『作品』に出てくる多喜二を引き合いに出すのはどうなのさ」
共産党関係者もツイッターで同記事を紹介していたが、「こういう連中が寄ってくるから取扱に気をつけねばいかんのだ」と嫌悪感を表明するファンがいた。
赤旗「政治利用という見方は理解ができません」
ただ、こうしたファンの反発には、違和感を覚える人が多かったようだ。「小林多喜二は明確に政治的な人間」なのだから、「政治利用」に反発するファンは理解できないというツイートが大きな反響を呼んだ。
「(小林多喜二は)共産主義者であり、共産党員でもある。そしてその事が原因で逮捕され、拷問の末に獄中死したのだ」
「むしろゲームの制作会社とプレイヤーこそが小林多喜二をアニメ的、ゲーム的に利用または消費しているという認識の方が妥当ではないのか」
そもそも小林多喜二は共産党員だったのだから、ゲームのキャラクターになった小林多喜二を共産党が取り上げるのも当然のことと言えば当然だ。作品にも共産主義思想の影響が色濃く出ており、政治抜きで語ることの方が不自然ではある。
赤旗の担当者によると「特に抗議は寄せられていませんが、政治利用という見方は理解ができません」ということだった。小林多喜二だけでなく、政治と何らかの関わりを持っていた文豪は多い。たとえゲームのキャラクターだとしてもそうした側面を切り離すのは難しいのではないだろうか。