「労働監督の民間委託はILO条約違反」 全労働省労働組合が反対意見を表明
民間委託の背景には、監督官の不足がある。同会議が5月8日に発表した「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース取りまとめ」によると、
「近年、総事業場数に対する定期監督を実施した事業場数の割合が3%程度にとどまっており、事業場に対する十分な監督が行われているとは言い難い状況にある」
という。その上で同会議は、「労働基準監督署における監督指導の実効性を確保するとともに、労働基準監督官の業務を補完」するため、民間の活用を推し進めるという。
規制改革推進室の担当者はキャリコネニュースの取材に対し、「現在、民間委託を進める方針で話し合っており、6月にまとめる答申に盛り込む予定」と語る。監督官が不足しているのであれば、増やせばよいのではないかという記者の質問に対しては、次のように語った。
「監督官を増やすかどうかということについて、規制改革推進会議が何かできるものではありません。それは厚生労働省の管轄です。ただ、推進会議は、監督官を増やさなくていいと言っているわけではありません」
労働基準監督官は、特別司法警察職員として捜査権や逮捕権を付与されている。しかし、監督官の業務を社労士に委託するのであれば、「司法処分につながる業務は委託しません。社労士は、あくまでも監督官を補完する役割ですから、司法権は付与しません」としている。
「ILO条約は、監督官は公務員でなければならないと定めている」
一方で、全労働は民間委託に反対してきた。5月2日には、サイト上で「労働基準監督業務の民間委託の検討に関する意見(その2)」という文書を発表。そこでは、
「労働基準法は中央、地方の監督機関を国(厚労大臣)の直轄機関とすることで監督業務の実効性を確保しています」
と指摘している。もしも監督業務が民間に委託され、厚労大臣の管轄ではなくなれば、労働基準法に抵触するということだ。さらにILO条約にも違反する恐れがある。意見書には、
「ILO81号条約(批准)も、監督職員は不当な外部圧力と無関係な公務員でなければならないとし(条約6条)、必要な資格を考慮して採用し、訓練を施すべき(条約7条)と定めています」
とある。
全労働省の担当者は、「ILO条約は、監督官は公務員でなければならないと定めています。労基法でも、厚生労働大臣の直接の指揮の下に監督を行うとしています。監督官が他の団体や個人から影響を受けずに業務を行うためです。もしも民間委託すれば、ILO条約と労基法に抵触すると思います」と語った。