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専門職大学、本当に「ニーズにあった人材」を育成できる? 識者は「産業競争力の強化には繋がらない」と指摘

改正学校教育法が5月24日、参議院で可決・成立した。これにより実践的な高等教育を行う「専門職大学」「専門職短期大学」の設置が可能となった。早ければ2019年にも開学される見通しだ。

学術研究を主目的とする大学では、産業構造の変化に対応できない?

2019年の開学は何校になるのでしょうか

2019年の開学は何校になるのでしょうか

設立には、卒業単位の3割~4割を企業実習で賄うことや、実務経験のある教員を4割以上配置するなどの条件が義務付けられる。原則として扱う分野に制限はないものの、ITや観光、農業など、成長分野と言われるジャンルでの設立が期待されている。

18歳人口が減っているにもかかわらず大学を新設しようとする背景には「学術研究を主目的とする現在の大学では、産業構造の変化に対応し、業務改善や革新ができる人材を育成できない」という考え方があると、文科省高等教育局の担当者は言う。

しかし、現在多くの大学ではキャリア教育に力を入れており、インターンシップの単位認定なども盛んになるなど、学生に実社会との接点を持たせる施策が実施されている。また、社会福祉士や看護師といった資格職の養成を行っている大学と、想定されている専門職大学との明確な違いが明確でないため、現在の高等教育機関を充実させれば足りるのでは、という指摘もある。それでも同担当者は

「現在のキャリア教育は各大学の自主的な取り組みに委ねられている。国が新たに制度を作ることで、企業実習などを確実に経験できるものとなり、教育全体の拡充を後押しできる。社会のニーズに合った人材育成が出来る」

と、専門職大学の意義を強調する。

専門学校が専門職大学を目指すには、ハードル高くメリット小さい

とはいえ、懸念の声は根強い。文科省が主張する「社会のニーズ」が、企業のニーズに偏っているという指摘や、人文科学系の教養が軽視されるのではといった警戒、学位の国際通用性への疑問など後を絶たない。

今年3月には全国大学高専教職員組合中央執行委員会が「中教審の中でも反対あるいは慎重な意見も多く出され、結論を得る状況ではなかった」として、法案提出に強い反発を示していた。

想定されているように、専門学校が専門職大学になれば、大学というステータスも手に入り、文科省から補助金を貰えるようにもなる。であれば、専門学校はこぞって専門職大学を目指すのではないかと思われるが、どうやらそうでもなさそうだ。5月26日18時現在、大学教員公募サイトJREC-INポータルでは、1校が専門職大学設立準備メンバーを募集している程度だ。

専門学校の動きが鈍い理由を、元文部省官僚で、大学マネジメント研究会会長の本間政雄氏は「専門職大学は専門学校や短大にとってメリットがない」からではないかと推測する。施設面などで越えなければいけないハードルが多いのだ。

大学は大学設置基準に基づき、図書館や医務室などを占有する必要がある。教員の研究室も、「専任の教員に対しては必ず備える」とされている。

一方、専門学校が拠り所としている専修学校設置基準では、こうした設備は「なるべく備えるもの」で、設置義務はない。賃貸ビルを校舎とする専門学校も多く、現行の基準に倣って施設を整えるにはお金がかかる。専門職大学の設置基準は今の大学設置基準より緩くなる見通しだが、とはいえ、設備投資の増額は避けられないだろう。

社会人の入学促進も意外と困難 「専門職大学は失敗すると思う」

本間氏は他にも

「専門学校の場合、学科の新設は都道府県知事の認可で済み、教員の学位も、博士号必須という訳でもない。大学は学問の自由が与えられるのと引き換えに、教授会の設置や7年以内ごとの認証評価などが義務付けられる。高等教育局からのチェックも入るようになるため、専門学校は、今の柔軟さを維持できない」

と指摘する。

また、期待されているような社会人の入学促進効果も

「社会人の学びでネックになるのは履修形態と授業料の高さ。昼間の開講しかなければ、仕事を辞めないと通いたくても通えない。授業料も大きな負担になる」

との理由で見込めないと話す。こうした点から、「本来の目的だった産業競争力の強化には繋がらない。専門職大学は失敗すると思う」と断言している。

産業構造の変化に対応するためという名目で始まった一連の議論は、ひとまず専門職大学の設置という案に落ち着いた。政策の評価が出るまでは、数年かかりそうだ。

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