「若者の狩猟離れ」が深刻化 クマ駆除に支障きたす可能性、猟友会は会員確保に奔走中
猟友会は、銃やわな、網などの狩猟免許保持者による団体で、野生鳥獣の駆除や保護に取り組んでいる。環境省の発表では、狩猟免許の取得者数は1976年の約51万8000人をピークに減少傾向にあり、2014年にはおよそ19万4000人と40万人も減っている。高齢化も深刻で、免許取得者のうち半数以上が60代以上。20代はごく僅かだ。
大日本猟友会専務理事の浅野能昭さんは会員数減少の理由を「自然保護の潮流と銃規制強化の影響」と話す。キジ、カモなどの野生生物は狩猟対象として見るのが一般的だったが、1971年の環境省設立を機に、世の中が動物の保護・保全といった視点に変化していったという。
銃は、免許の取得から所持申請まで手続きが煩雑で、新たに持つ人が少ないのだそうだ。狩猟免許は散弾銃やライフル銃などの「第一種銃猟免許」、空気銃の使用を許可する「第二種銃猟免許」、「わな猟免許」、「網猟免許」の4種類に分かれている。どの免許を取得するかは自由だが、かつては第一種・二種の免許取得者が最も多く、狩猟免許取得者の9割以上を占めていた。それが今や、半分程度にまで落ち込んでいる。
会員の減少と高齢化がこのまま進めば、効果的なクマの駆除が出来なくなる恐れもある。
警察官の持つ拳銃では威力が弱いため、クマの射殺は不可能だ。手負いにすれば反撃される危険性がある。「猟銃を使って一発で仕留めるのが、最も安全な駆除方法。我々にしかできない仕事です」と、浅野さんは猟友会の活動意義を強調する。
近年ではジビエ料理が浸透し始めたこともあり、鹿やイノシシなどは仕留めた後売られるケースもあるが、クマは規制上、肉も毛も売買されることはほとんどないそうだ。
狩猟免許試験の日程を休日にし、働いている人の取得ハードルを下げるなど工夫
会員数減少を重く受け止めた猟友会や自治体は、会員獲得に乗り出している。
秋田県は2013年から狩猟免許の試験日を休日に設定し、平日働いている人が受験しやすいようにした。翌2014年からは若者に狩猟の魅力を伝えるための特別フォーラムを実施し、年配の猟友会会員にやりがいを話してもらったり、ジビエ料理の試食を開催したり、社会貢献性の高さをアピールしたという。
その甲斐あってか狩猟免許合格者数は年々増加し、昨年2016年には108人と3桁を超えた。県自然保護課の担当者は「辞める人のほうが多いので猟友会の人数はすぐには増えない」と言うが、「若い人は増えつつある」と、吉報であることは間違いないようだ。
大日本猟友会も2013年に「目指せ!狩りガール」というウェブマガジンを作り、女性への訴求に取り組んだ。統計を取っていなかったためキャンペーンの効果を正確に把握するのは難しいものの、2015年に全国で1183人だった女性会員は、翌年には1571人と約400人増えている。
猟友会には、増え続けるシカやイノシシの数を適正化することで、農作物や植物への被害を食い止め、生態系を維持するという役割もある。駆除に対する報酬が無い市町村も多いため、活動はほとんどボランティアのようなものだが、興味のある人は、免許取得を検討しても良いかもしれない。