時給400円で深夜まで奴隷労働 「メイド・インジャパン」は外国人技能実習生の犠牲の上に成り立っている
岐阜県大垣市の縫製工場で働く5人の中国人女性が訴えたのは、長時間労働と賃金・残業代の未払いだ。会社が書かせた勤務表には、8時半から19時までとあるが、実際は7時から24時まで。日曜日以外ほぼ毎日働き、7カ月で1日しか休みがなかったという。彼女たちは、
「明け方4時に帰ってきて2時間しか寝られない時もあった」
「給料は3か月もらっていない」「残業代は2月から4か月(未払い)」
と口々に苦境を訴える。
給料明細はすぐに取り上げられてしまうため、スマホで隠し撮りしていた画像を見ると、時給は最低賃金を大きく下回る400円。残業時間は197.25時間とはっきり明記されていた。給料はこれだけ働いてたったの13万8900円だ。
未払いの賃金は1人当たり620万円以上にのぼる。彼女たちは、同センターの責任者・ケンカイさん(58歳)が組織する労働組合に加入し、賃金と残業代の支払いを会社に求めた。ところが社長は「払う金がない」と言い、そのまま倒産してしまった。
数十日後、寮になっていたアパートも契約解除。彼女たちは住む場所まで奪われた。ケンカイさんはこれを、倒産での賃金未払いを立て替える、国の制度を利用した計画倒産と見ている。原資は企業が負担した保険料だが、会社の記録を元にした未払い分の8割しか出ない。彼女たちはケンカイさんの元に身を寄せており、未払い分を取り戻すまで中国には帰れないと涙ぐんでいた。
「制度に大きな欠陥」と専門家も指摘
技能実習生の問題に取り組む指宿昭一弁護士は、「制度に大きな欠陥がある」と指摘する。違法があれば移れるという建前にはなっているが、実際に声を上げて(会社を)移れるケースはまれで、「移る先を見つけようがないし、誰も協力してくれない」のだという。
実はほとんどの実習生は、渡航費や研修費などで60万円~100万円の借金をしてやってくる。職場は選べず、低賃金で長時間労働でも我慢して働き続けるしかない。まるで奴隷のようだ。「唯一逃れる手段は逃げること」で、それが失踪のケースの多くだと説明した。
中には、カンボジア人実習生たちに訴えられ、素直に支払いに応じた婦人服の縫製工場もある。その会社社長は、「景気が悪くなって、加工賃が1着1200円に下がっている。2000円くらいもらわないと…」などと、自身もつらい立場を明かしていた。
服を1着作るのは結構な技術を要するが、1着1200円とはなんとも切ない。そこから利益を出すためには何百着も作らなくてはならず、低賃金で長時間労働が蔓延してしまうのだろう。
「18世紀かよ」などと、驚き、嘆きの声
それにしても、時給400円はあんまりだ。番組を見た視聴者からは、「18世紀かよ」などと、驚きの声が、多数あがっていた。
「(中略)己の利益しか考えていない経営者のなんと多いことか。日本ってどうしてこんな国になってしまったんだろうなぁ」
彼女たちが主に作っていた服は、「メイド・イン・ジャパン」をウリにする婦人服ブランドだ。品質に厳しいが納期は短く、5日で500枚以上つくったこともあるという。番組では名が伏せられていたが、タグの映像からネットユーザーに特定され、ツイッターで晒される事態にもなっている。
「メイド・インジャパン」は時として、外国人実習生たちの犠牲の上に成り立っていたのだ。やはり暗然としてしまうが、こうした現実を日本人がもっと知るべきという番組の姿勢に対して、「さすが!もっとやってほしい!」という称賛の声も多数上がっていた。