Uberで食費を稼ぐ米国の主婦 寝ている子どもを起こす前に「一仕事」
先日、ホリエモンこと堀江貴文さんが「複数の仕事を掛け持ちして時間分割して、という働き方が当たり前になるでしょう」と発言し、話題になったという記事を読みました。実はこのような働き方は、米国では市民権を得つつあります。
その働き方とは、「ギグ・エコノミー(gig economy)」と呼ばれるもの。日本では聞きなれない言葉かもしれませんが、先行き不透明な時代に「頼りになるのは企業よりも自分個人」と考える人たちに注目されているのです。
35歳女性が「運転手」と「便利屋」サービスに登録
音楽好きな人の間で「ギグ」という言葉は、ロックミュージシャンの「一晩限りのライブ」という意味で知られていますが、英語の俗語では「日雇い仕事」という意味。これに「エコノミー」がつくと、「仕事の合間を利用した仕事」になります。
8月16日付のニューヨークタイムズには、ナターシャ・シンガーが米国におけるギグ・エコノミーの現状をレポートしています。
ボストン郊外に住むジェニファー・ガイドリーは、米海軍の退役軍人の35歳で元は会計士。今は自分の車を使って、UberやLyft、Sidecarなど配車サービスのアプリから連絡してくる乗客を目的地へ運ぶ「オンデマンドの運転手」として稼いでいます。
彼女は便利屋サービスのTaskRabbitにも登録していて、クライアントのために家具を組み立てたり、庭の手入れをしたりします。目標は平均時給25ドル(約2,800円)。3人の子どもを育てながら、家賃と食費をカバーしています。
米国で副業を探す人は、このようなサービスで収入を得ることができるようです。輸送サービス以外にも、短期のブローカーや軽作業、配達サービス、食料の買い出しなど、あらゆる業種があるといいます。
エージェントを使った「ギグ・エコノミー」には、エージェントのルール変更に振り回されるリスクがあります。UberとLyftは最近乗客への運賃を値下げし、TaskRabbitもクライアントがサービス提供者を選択する方法を変えました。
その一方で、このような仕事形態で働くことのメリットもあります。労働者は自分のスケジュールを立てることができ、仕事のバラエティも広がります。
「最低賃金」を定めるエージェントも登場
記事に登場したガイドリー夫人は、午前4時半にスマホを確認します。クライアントの依頼を受け、2分待って相手が心変わりしないことを確認してから家を出ます。その日、彼女はクライアントを空港へ送る仕事2件をこなしてから、寝ている子どもを起こしました。
楽な仕事ではありませんが、出産後に仕事との両立ができずに退職後、パートタイムの仕事も見つからなかった彼女には、このような働き方はピッタリだったようです。彼女は土日だけで263ドル(約3万円)稼ぎました。
ただ「私はこの自由が好き」といいながら、彼女は料理や家具の修理を「フルタイムでやりたいとは思わない」といい、「これを何日も続けるわけにはいかない」のでギグ・エコノミーを続けるか、正規の雇用を探すか思案中です。
顧客側も、これまで専門業者がやっていた仕事を、必要な時に気に入ったパート労働者に依頼できます。固定費としての雇用コストが掛からないので、エージェントは投資家からかなりの投資を得ています。
エージェントはサービスを提供する労働者を雇用者と見なしておらず、基本的に健康保険や失業保険の対象外です。ただ、米国19都市に3万人の労働者を抱えるTaskRabbitのように、最低賃金を時給15ドル(約1680円)と定めたり、労働中の事故や器物の破損をカバーする保険ポリシーを取り入れ始めたりするところもあります。
働くというと、「企業の社員としての就職」以外はかなりマイナーな日本ですが、テクノロジーが新しい市場を作る可能性はあるのではないでしょうか。
(参考)In the Sharing Economy, Workers Find Both Freedom and Uncertainty (The New York Times)
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