「障害者が頑張っているの見て面白いですか?」――「24時間テレビ」の裏で今年も「バリバラ」がやってのける
同番組は障害者をテーマとして、実際に多数の障害者が登場するバラエティ番組である。誕生のきっかけは、NHKに寄せられた、障害を抱える視聴者からの声だった。
テレビに出てくる障害者はみな、何かをひたむきに頑張っているという姿を、ことさらに強調されていて堅苦しいというのだ。「感動ポルノ」とも言われる「24時間テレビ」はその最たる例だろう。
番組では障害者が健常者と一緒に笑いあえるような作り方を模索し続けている。昨年には、日テレがまさに「24時間テレビ」をやっている最中に、同番組の掲げる、美化され過ぎとも捉えられかねない障害者の姿を皮肉る内容を放送して話題になった。
そして今年も「24時間テレビ」の裏でやってくれた。この日は生放送であったが、番組のサブタイトルが「告白!あなたの夢はなんですか?」になっており、完全に被せている。
出演者みんなで「笑いは地球を救う」と書かれた黄色のTシャツを着用。「障害者の夢、応援してみました」というコーナーなんか最高だった。
ハートフルなナレーションにBGMが流れる。この時点でこの演出は前フリになっていることが分かるので既にちょっと狙いがバレバレで最高だ。
最初に登場したのは、筋力が徐々に衰えてしまう難病、筋ジストロフィーを抱えた男性。今では指先が僅かに動く程度という彼の夢は「野球がしたい」であった。番組はその夢をかなえるため、グラウンドを借り切って、野球ができるよう手伝いをした。
バットを振ることはできないので、指先でバットを押さえてバントを狙う。ピッチャーは、バットに球が当たるように調節して投げ続けること、72球目。とうとうバットに球が当たり、バントに成功した。
急いで番組スタッフは、男性の車椅子を押して一塁に走る。しかし車椅子がやや重かったことが災いし、無情にもアウト。ここで「野球ができて、よかったね」というテロップが挿入される。
しかし、「野球やってみて、どうだった?」との問いに、「あまり楽しくない」。その後男性は、他の野球青年と一緒にパワプロに興じていた。
次に登場したのが、頸椎損傷で歩けなくなってしまった男性。その夢は、「プールに飛び込みたい」というもの。男性は5年前。学校のプールに飛び込んだ際、水がなかったため思いっきり体を打ち、胸から下が動かなくなってしまったのだ。
番組は立派なプールを用意。次のカットではいきなりスタッフ2人が男性を抱え「いっせーのーせ」の合図でプールに投げ入れた。勢い良く水しぶきが立つ。程なくして、待機していたライフセーバーによって水面に引き上げられた。
スタッフに「過去を乗り越えた気分はどう?」と聞かれた男性が、「いや、もう(過去なんか)乗り越えてるし、ただ飛び込みたいって言っただけなんだけど……」と困惑気味なのがシュールだった。
「障害者は後ろ向きに生きていると思われがち。でもそんな人ばかりじゃない」
3人目に登場したのは、脳性まひを抱える男性。夢は登山だ。小学生の頃、遠足で山に登ることになったが、障害のために一人だけ断念させられた、という過去があった。「24時間テレビ」なら、大仰な演出と感動の再現ドラマなんかを用意して、じっくり放送するような内容だ。しかしこれはバリバラ。そういう演出は見せてくれない。
登山口はいきなり階段。車椅子から降ろされ、地面にうつ伏せになって登頂を目指す男性だったが、当然体は動かない。スタッフは「登山が夢だって言ったじゃん」と励ますが、それに対して「自分の力で登りたいとは言ってない」と返す。
結局、男性は普通に介添えしてもらいつつ登山して、景色でも見れればそれでいいぐらいのスタンスだったのだ。小さな願望を勝手に大層な美談にされちゃあ敵わない。番組の構成上、そこかしこに笑えるポイントは用意されてはいるが、伝えようとしていることは、これほど率直で切実なものはない。
「障害者が頑張っているの見て、そもそも面白いですか?」
「障害者っていうと後ろ向きに生きているんじゃないかと思われがち。でもそんな人ばっかりじゃない」
という出演者の言葉が印象的だった。
もちろん、「24時間テレビ」の企画意図も素晴らしいものだとは思うが、少々時代にそぐわないコンセプトになっているような気がする。障害を持つ人の中には、健常者から色眼鏡で見られて、勝手に清浄で侵しがたい存在にされてはたまらないという方もいるだろう。
そういった思いを持つ人々の、声なき声を拾い続け、しかも笑いも混ぜてそれとなく伝えてくれるバリバラは、「24時間テレビ」よりも影響力はないものの、勝るとも劣らない番組だと感じた。
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