少女終末旅行、けものフレンズ… 「ヒトとは何なのか」を問い直す「終末モノ」アニメが密かなブームに
異世界転生、チート、ハーレム……こうした内容を扱った作品が近年書店に多く並んだり、アニメ化されたりしている。こういった作品は主人公だけが持つ能力によってファンタジー世界で無双するようなものが多く、主人公の「俺強え」、から「俺TUEEE」系と呼ばれることもある。
だが、こうした流行の影で、いまひそかに「終末モノ」がブームになっている。――そう感じさせる作品がある。現在、放映中のアニメ「少女終末旅行」だ。この作品は、2人の少女が「ケッテンクラート」と呼ばれるキャタピラー付き自動車に乗って、文明が崩壊した世界の巨大な廃墟都市を旅するというもの。旅する目的も、食料を求めたり、車の燃料を探したりといったものが主だ。
チトとユーリの会話で人間の内面に迫る「少女終末旅行」
この2人の少女……チトとユーリ以外の登場人物はほとんどおらず、2人しか登場しない放送回も珍しくない。先に触れた「俺TUEEE」系といった近年の作品では、女性を中心にキャラクターが多く登場するものも少なくないが、それと対極に位置していると言える。2人だけの会話で、人間の内面に迫る哲学的なやり取りや、作品全体の世界観に迫っていく様子に奥深さを感じる人もいるかもしれない。中には写真が登場する回もあり、そこには西暦3230年とおぼしき数字列も写っている。
このような文明が荒廃した終末世界を描いたアニメ作品は実はあまり多くない。一番著名なのが、「風の谷のナウシカ」(1984年)だろう。2010年以降では、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」(2010年)や「人類は衰退しました」(12年)。近年では「planetarian」(16年)、「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」(17年)などがある。
「けものフレンズ」はフレンズだけが生きのびた終末世界?
今年大ヒットしたあの「けものフレンズ」も、実は終末モノという見方もできる。この作品は超巨大総合動物園「ジャパリパーク」を舞台に物語が繰り広げられるが、物語の中盤からジャパリパークが「例の異変」によって放棄された廃墟であることが明かされる。人類が存続しているかどうかはわからないが、動物達は「フレンズ」と呼ばれる擬人化した形で確かに存在している。このことから、「けものフレンズ」の舞台はフレンズ達だけが生き延びた終末世界だと解釈しているファンも少なくない。
「けものフレンズ」と「少女終末旅行」、この2つの作品には類似点も複数ある。一つは、どちらも主人公が2人であるという点だ。「けものフレンズ」でも、かばんちゃんとサーバルちゃんという”2匹”によって物語が構成されている。かばんちゃんとチトは慎重なツッコミ役として、サーバルちゃんとユーリは好奇心旺盛だけどおっちょこちょいな役回りを演じている点でも共通している。
さらに、どちらもヒトという生き物を見つめ直している点で似ている。「けものフレンズ」ではフレンズという人の形をした動物という立場から、「少女終末旅行」では、文明が崩壊したはるか未来の立場から、「ヒトという生き物はなんなのか」というテーマが描写されている。つまり、どちらも終末世界を通じ人文主義、ヒューマニズムを描いていると言えるのだ。
「少女終末旅行」が「けものフレンズ」のヒットに続くかどうかは未知数だ。だが、終末世界を通じ、人間とはなんなのかを描く。そんな物語が今後も続くのかもしれない。
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