深刻な地方の医師不足、年収2200万円でも採用できず 青森県深浦町
待遇は悪くない。年収2200万円で住宅完備、光熱水費・通信費も無料。学会や研修参加のための旅費も町が負担するというものだった。しかしそれでも新しい医師の採用には至らなかったという。診療所の担当者は、次のように話す。
「公募と紹介の双方で医師を探しており、何人かの応募もありました。しかし希望よりも年収が少なかったり、家庭内の事情があったりと折り合いがつきませんでした。そこで元々診療所に勤めていた76歳の医師に戻ってきてもらうことになりました」
ひとまず医師を1人確保できた形だが、いずれまた医師不足に陥ることが目に見えている。同担当者は、「1町村単独で医師を確保するのは難しく、地域の枠組みの中で医師を派遣してもらいたいと思っています」という。
深浦町は、五所川原市やつがる市、鰺ヶ沢(あじがさわ)町など2市4町で構成する「つがる西北五広域連合」に加わっている。市町村が連携して行政運営にあたるための枠組みだ。
同連合では、つがる総合病院(青森県五所川原市)を中核病院とした地域医療連携に取り組んでいる。普段は地元の診療所で受診するが、必要があれば、つがる総合病院やさらには弘前大学附属病院等に紹介するというものだ。この連携の中に同町の診療所を組み込み、医師の派遣を求めていくという。
人口10万人に対する医師の数は全国平均240.1人、青森県では198人
近年、医師の偏在が問題になっている。厚生労働省が発表した「医師・歯科医師・薬剤師の概況」(2016年)によると、人口10万人に対する医師の数は全国平均で240.1人。東京都や西日本の各府県には平均を上回る医師がいる一方で、青森県は10万人当たり198人と全国平均を大きく下回っている。岩手・茨城・埼玉・新潟なども平均以下だ。
医師がいない、医療機関へのアクセスが難しいという地域は少なくない。山梨県鳴沢村は2017年10月まで診療所も病院もない「無医村」だった。同村が6000万円の補助金を出したことでやっと医師が1人移住を決めたという。