ベビーカーの価格でランク付けされる!? ママたちを悩ますベビーカーマウンティングの実態
人ごみの中や電車内などを舞台に巻き起こる、ベビーカー問題。これらはベビーカーの使用方法を巡る論争がほとんどだが、幼い子を持つママたちの中には、それとは異なる問題に頭を悩ます人もいるという。ママたちのあいだで何が起こっているのだろうか? 経験者に聞いた。(取材・文:千葉こころ)
昨年、両家にとって待望の初孫となる男児を出産した栗原茉奈さん(仮名・20代)は、夫の両親から外国製のブランドベビーカーを買ってもらったそう。
「妊娠中に出先で使っている人を見て、デザインにひとめぼれした物でした。調べてみたら生後6か月から長く使えるとのことで、ますます欲しくなったのですが、10万円以上したので自分たちでは買えず、夫の両親の好意に甘えました」
10万円越えのベビーカーがきっかけで起きたセレママからのマウンティング
念願のベビーカーで可愛いわが子を連れてお散歩。幸せなママライフをスタートさせた茉奈さんでしたが、ママ友づくりのために参加した地域のベビーサークルをきっかけに困ったことになります。
「初参加の日、30代前半くらいのママさんに『素敵なベビーカーね。○○(ブランド名)のだよね?』と声を掛けられたんです。それをきっかけに仲良くなったのですが……」
ある日、彼女を含む数人のママたちとサークル後のランチを楽しんでいたときのこと。出産時の話題になり、病院や出産方法を聞かれた茉奈さんは、「他県にある実家近くの病院で無痛分娩をした」と答えました。
すると最初に仲良くなったママから、「痛み知らずなんていいわね~。私は陣痛で40時間くらい苦しんだのよ」と、どことなく上から目線で返されてしまいました。どうやら、壮絶な出産経験をしたママほど”大変な思いをして産んだ分、母として偉い”というマウンティングだった様子。
さらにその後も、自分は近所でも有名な高級産婦人科で出産したこと、周囲からの出産祝いは有名ブランドがほとんどだったことなどを延々と聞かされ、挙句には、「茉奈さんは実家に頼れて幸せよね。うちは夫が会社役員で忙しいから、夫を置いて里帰り出産なんてできなかったの」とまで言われてしまいました。
「あとから他のママに聞いた話なのですが、彼女はこのあたりでは高級とされるエリアに住んでいて、ベビーカーもサークル内でいちばん高価だったそうです。そこに、庶民の私が彼女より高値のベビーカーで乗り込んできたため、『自分の方が格上だ』と、ことあるごとに示していたいみたいです」
結局、無難な価格帯のベビーカーを買い直すはめに……
その後も事あるごとに”自分の方が格上”アピールをされて面倒くさくなった茉奈さんは、「このベビーカーは夫の両親が買ってくれたんです。私たちは普通の会社員家庭だから、とてもじゃないけど自分たちじゃ買えません」と、やんわり張り合う気がないことを伝えたそう。
「彼女はすごく満足そうな顔をしていましたね。なので、これでマウンティングは終わると思ってホッとしていたのですが……」
それからほどなくして、サークルに新しく参加したママが、「これ、○○のベビーカーですよね!?」と茉奈さんに声をかけてきました。そのママが「いいなぁ」「これ高いですよね?」「私もほしかったなぁ」としきりに羨ましがっていたところ、なんとマウンティングママがそばに来て、「ご主人のご両親に買ってもらったそうよ」からはじまり、茉奈さんの家庭についての説明までしだしました。
さらには、「ちょっと乗らせてもらったら?」と、まるで自分の物のようにベビーカーを貸し出してしまったのだとか。
「別に減るものではないからいいんですけど。なんで彼女がその場を仕切って、初対面の相手にうちのことをペラペラ話して、しかも勝手に乗らせているのか……。理解に苦しみました。きっと、私がこのベビーカーを使っている限り、彼女にとって目障りな存在なのでしょうね」
その件があってから、茉奈さんはそのサークルを退き、平均的な価格の無難なベビーカーを買いなおして、別のサークルへ移ったそうです。
「義両親に買ってもらったベビーカーは、個人的なお出かけのときにだけ使っています。買いなおすのに夫を説得するだけでも大変だったし、無難なものでもそれなりの値段はするので、痛い出費にもなりました。まさかベビーカーの値段でこんな目に遭うなんて思いもしませんでしたよ。何から何まで格付けの対象になるなんて、ママ友関係って面倒すぎですね……」