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「作業」と「仕事」分けて大成功! 鹿児島の農業生産法人が「牛さんと話す時間できた」

鹿児島県薩摩川内市で和牛の大規模肥育を営む農業生産法人のざきは、国内最大級の4800頭の黒毛和牛をたった15人で育てている。上質な赤身が国内の牛肉コンクールで数々の賞を受賞しているが、市場では他のブランド牛より割安だ。

2015年2月12日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、のざきの社長を務める野崎喜久雄氏(65歳)の経営秘話と人材育成術を紹介した。おいしい牛肉を育てる秘訣は、意外なことに「作業の徹底した合理化」だという。

大量肥育でも下がった牛の死亡率

のざきのウェブサイトより

のざきのウェブサイトより

のざきでは、配合飼料は大手飼料メーカーに配合から発注。餌やりも餌タンクから牛舎まで大きなパイプでつながっているので、担当者はボタンを押すだけだ。牛舎のフン掃除も外注で2400万円かかるが、社員は掃除から解放された。

では社員は何をしているのか。その仕事は「牛をよく見ること」だという。入社9年目の井ノ口さんは、自分の仕事を次のように説明する。

「元気なのか、餌をたべているか。語りかけるように見ている」

牛舎を回っていると、牛が1頭倒れていた。ガスが溜まって死ぬこともあるので、すぐに他のスタッフを携帯で呼び、慣れた手つきで立たせていた。力関係で餌を食べられない牛を見逃さず、数頭いる囲いからの「クラス替え」も欠かさない。ストレスなく食べさせることで、平均して大きな牛が育つ。

人の通り道を、牛がいる場所より60センチ高くして奥まで見渡せる構造にもしている。鹿児島の牛の死亡率は平均で3%だが、のざきは1%で病気になる牛も少ない。野崎社長は、牛舎をリニューアルするとき「仕事」と「作業」に分けたという。

「作業の部類は外注で、自分たちは牛さんと話をすることに時間を割くのが仕事」

分業をうまく行うことで、飼育者の社員1人あたりの肥育頭数を400~500頭の規模まで増やす。およそ3億円相当の牛たちの管理を、平均25歳という若さの社員たちに、入社1年目から1人で任せているのだ。

社員が「自分の物語を作ろうとしている」職場

若い社員たちは、それぞれの牛の肥育法を実践することを任されており、野崎社長は「誰かがなんとかしてくれる、では成長しない」とその意味を語った。

入社2年目の松崎幸乃さん(22歳)は、クラス替えの時に逃げ出した牛にも、両手を広げて敢然と立ち向かっていた。足の甲を牛に踏まれて骨折したこともあるが、可愛くてたまらないという様子で牛をなで、やりがいと喜びをもっている様子だった。

「仕事をしていて、牛さんの成長とか、エサを食べるところを見るのが楽しい」

4年目の宮内さんは、膀胱が破裂した牛に気づかず危篤状態にさせた経験を持つ。「前兆はあったはずで、自分が気づかなかっただけ。ショックで初めて泣きました」と明かし、その時の自分が許せず、いまでは弱り切った牛がいれば夜を徹して見守るという。こういう社員たちが切磋琢磨しているのだ。

「牛さんの状態をよく見て、気づきの中で問題を解決していくことで、自身が成長できる。みんな自分の物語を作ろうとしている」

こう話す野崎社長は、大変な苦労もしている。家業を引き継いだ後に牛肉の輸入自由化で業界は震撼し、2006年の川内(せんない)川の氾濫では牛舎が屋根まで浸かり、倒産寸前の被害にも見舞われた。

苦を突破したときに「人生の知恵」が生まれてくる

それでも野崎社長は不屈の精神と知恵で、ここまで乗り越えてきた。牛舎で牛の頭を撫でていると、「もっと撫でて」とばかりに牛が頭を突き出してくる。

「僕らが牛さんを管理するのではなく、牛さんにいい思いをしてもらおうとしていると、おいしい肉に、牛が自分で変わろうとするんじゃないか」
「良い時だけが人生じゃない。苦の方が時間的には長い。その苦を突破したときに『人生の知恵』がひとつ生まれてくる」

そう真剣な表情で語る野崎社長に、小池栄子が「ストレスかかると、おいしくないイメージですよね」と言うと、村上龍は「そうそう、本当にそう」と答えていた。

働く人がみな「牛さん」と敬称をつけていてほほえましい。牛に対する愛情が、本当に「牛さん」をおいしくしていると信じられるし、合理的でありながら牛と社員への愛情にあふれる経営術だと感じた。(ライター:okei)

あわせてよみたい:ハーゲンダッツに選ばれた北海道浜中町の牛乳

 

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