上場企業の財務諸表から待遇を探る「これだけもらえる優良企業」シリーズ。今回は、海外旅行を中心とした旅行事業を主軸に展開するエイチ・アイ・エスを取り上げます。
HIS社員の平均年収は416万円
最新データ(2020年10月期)によると、HIS社員の平均年間給与は416万9193円。前期より86万円あまり減っています。
- 2016年10月期:432万7559円
- 2017年10月期:413万9955円
- 2018年10月期:451万4552円
- 2019年10月期:503万3555円
- 2020年10月期:416万9193円
この額には基準外賃金(手当等)および賞与が含まれており、業績の悪化が賞与に影響を与えたのかもしれません。
企業口コミサイト「キャリコネ」に投稿された給与明細によると、営業担当の29歳女性社員の年収は236万円。年2回の定期賞与は計20万円でした。
HISで働く最大のメリットは「安くホテルに泊まれたり、航空券がとれる。旅行が安く行ける」こと。ただし事業環境は苦しいこともあって、残業がなく「給料が新卒並みに低い」と嘆き「副業している人もいる」と明かします。
HISの業績はこのところ右肩上がりに伸びていましたが、2020年10月期は売上高が前期比46.8%減の4303億円、営業損益は311億円の赤字、250億円の最終赤字となっています。
2021年10月期の業績予想は、通期予想が困難なため第1四半期のみ開示されていますが、売上高は前期比82.0%減、100億円の営業赤字という苦しい見通しです。
HIS社員の平均年齢は32.9歳
次に、従業員数と平均年齢、平均勤続年数(ともに単体)を見てみましょう。
HIS社員の平均年齢は32.9歳。ざっくり言うと、30数歳で400万円台をもらっている人が多いということでしょうか。
- 2016年10月期:5,353人(33.5歳・7.3年)
- 2017年10月期:5,581人(33.8歳・7.7年)
- 2018年10月期:5,498人(32.3歳・8.1年)
- 2019年10月期:5,638人(32.6歳・8.4年)
- 2020年10月期:5,896人(32.9歳・8.7年)
HISの従業員数(単体)はここ数期で右肩上がりで増えています。
グループ全体(連結)でも2016年10月期の10,845人から、2019年10月期の15,202人へと1.4倍に増えていますが、2020年10月期には13,990人へと急減しています。
HISの報告セグメントは「旅行事業」のほか、ハウステンボスなどの「テーマパーク事業」、変なホテルなどの「ホテル事業」、「九州産交グループ」、「エネルギー事業」の5つ。
中核事業の旅行事業は、2020年10月期の売上高の84.1%を占めましたが、セグメント損益は211億円の赤字に。エネルギー事業を除く他の事業も赤字でした。
アフターコロナを見据えた新規事業も
HISグループでは、報告セグメントの中核事業のほか「不動産」やHS損保の「金融」といった新しい分野にも事業を広げてきました。
当面は旅行関連の事業環境が思わしくないことから、チャレンジ領域として「飲食」(そば屋)や「ホテル・旅館再生」「ライフ&エンディング」(海洋葬等)のほか、「人材派遣」「農業」「通信販売」といった新規事業プロジェクトを積極展開していくようです。
また旅行事業においても、アフターコロナにおけるシェア拡大をねらい、接客DXなどを着実に進めており、決してコロナ不況業種として落ち込むばかりではないようです。
キャリア採用サイトには、法務部門のほか、海外拠点での正社員求人、新規事業「満天ノ秀そば」のパート・アルバイトの求人もあります。コロナ後の成長を見据えてキャリアチェンジしたい人には、魅力的な職場となるかもしれません。
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