東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会が掲載しているエンジニア職の募集要項がネット上で物議を醸している。
現在、求人サイト上に「大会本部内業務アプリ開発・会場エンジニア(PL・PM)/係長」「セキュリティエンジニア/データ解析/主事~係長」など5種類の求人を掲載中。だが、その待遇はあまりに酷すぎるというのだ。
会場エンジニア(PL/PM)、係長の月給が34万7900円
募集要項によると、「大会本部内業務アプリ開発・会場エンジニア(PL・PM)/係長」の仕事内容は次の通り。
「COVID-19対策システム企画・設計・導入、大会会場IT機器の運用 ※本部内エンジニア/PM・PL」
具体的には、新型コロナウイルス対策としての各種システム企画・設計・導入のほか、各会場におけるIT環境の統括・構築運用が含まれるという。
“求めている人材”の欄には「組織内外との調整に必要なコミュニケーション能力」「PCやサーバー機器の基礎知識」「日常会話レベルの英語力」と記載。
また、歓迎条件として「情報システムやアプリケーションの企画・開発経験」「PCやサーバ機器に関するシステム構築・保守経験」と記されており、エンジニアとしての業務経験だけでなく、英語力まで要求されていることが分かる。
ところが、給与は月給34万7900円。年収換算すると420万円足らずで、これにネット上では「地獄のような求人」「3倍は欲しい」とあまりの報酬の低さに驚く人が相次いだ。
セキュリティエンジニアは23万円台「場合によっては、事務職よりも低い水準」
IT業界に詳しいヘッドハンターは、キャリコネニュースの取材に次のように語る。
「これは酷いです。この金額はあり得ません。普通であれば絶対に採用できないと思います。民間企業では、このクラスのエンジニアですと月給80~100万円、年収1000万円でも採用できないこともあるくらいです」
ところが、今回公開された募集要項では、いずれの求人でも待遇が半分にすら満たない。
「厚生労働省が発表したSEの平均年収は550万円ですが、今回の求人では英語力も要求されるし賞与もないので、採用するのはなおさら難しそうです。要件の人材を見つけるとなると、やはり年収650~1000万円前後は必要になってきます」
つまり、月給換算で50万円前後はないと「到底見つからない」と話す。そのほかの求人についても、
「セキュリティエンジニアの月給なんて23万5800円でした。しかも歓迎条件に『TOEIC600点程度の英語力』などと記載があります。”23万円”は場合によっては、事務職よりも低い水準です。大学生を採用したいのなら理解できますが、社会人はまず無理でしょう」
と印象を語った。
一般の求人であれば破綻している今回の募集要項。ただ、はてなブックマークでは「オリンピックに関わりたいと思う人間なんて腐るほどいる」などと五輪に関わるやりがいを理由に、応募が集まるだろうと考える人も一定数とみられた。
求人サイト上では、人事部採用課の社員インタビューとして、
「過去大会を経験した人。NPOなどで世界を舞台に活躍した人。企業・官公庁で活躍し、その経験を試そうと参加している人――。多様な人材が、共に大会成功を目指すこの組織。ここで手に入る経験値と人脈の幅広さは、他に類を見ないはず。ぜひ、キャリアを磨く機会としてご応募いただけると幸いです」
といったコメントも併せて掲載されている。
自国開催の五輪に関われることは、確かに一定の魅力があるに違いない。ただ、五輪限定の契約社員というポジションで応募したいという奇特な人材がどれだけいるかは疑問が残るばかりだ。