番組で紹介されたのは東京都内の3店舗で、40代の店長たち。1人目は仕事が好きでむしろ残業したいモーレツ店主。2人目の店長はマンションのローンと私立に通う子ども2人の学費を抱え、「残業代がなくなると生活費が回らない」と心配する。
ツイッターで特に注目を集めたのが3人目の43歳の店長だ。もともと「残業で自分が倒れては意味がない」という残業否定派で、人手不足は単発バイトを雇えるサービス「タイミー」を利用し解消できると考えていた。ところが、単発バイトは店長が1から毎回同じことを教えなくてはならず、却って余計な仕事やコストが増えてしまうという落とし穴があった。
その結果、残業が80時間を超えてしまい、山本社長に呼び出され説教されるはめに。
「店に活気があると自信持てる?」
「空回りなんだって努力が。このままじゃお店なくなるよ?」
「今まで頑張っていようが店主を降ろすしかないよ」
ガンガン指摘された店長は、神妙な表情で説教を聞き「それは嫌です」と決意表明していた。
そこで山本社長指揮のもと取り組んだのが、朝2時間かけていた「仕込み時間の短縮」だ。「さつまいもを揚げている間に豚汁を終わらせる」など、山本社長は極限まで作業を効率化する指示を出し、結果、半分の1時間に短縮できた。
これにネット上では、「怖いよ…作業の時短強要は気持ちを追い詰める結果になりやすい」など、心配や批判的な声が多数上がっている。正直、家庭で毎日料理をしている筆者も揚げ物をしながら急ピッチで他の作業をすることに危うさを感じた。これで残業時間が短縮できたとして、得をするのは人件費を削減できる企業のみで、労働者は疲弊し収入が減るのでは……という心配がよぎってしまう。
残業時間が削減できた、めでたしめでたしのように終わったが…
それでも様々な努力の結果、残業は削減され、山本社長は「社員たちも苦しんでいますが、それをみんなで乗り越えた時に人という部分で成長できて、企業として強くなっていける」と語った。
これに対してネット上では、バイトから叩き上げでのぼり詰めた社長が、まだ社員の熱意に甘えて精神論や根性論を説いていると捉えた人が多かった。「そうじゃないでしょ。本部主導で統一して変えないと」といった批判が続出している。
とはいえ、すべて現場まかせというわけではなく、時給アップに応えたり、店舗で切っていた肉をカット肉にしたり、支援員を派遣するなど、本部も何もしていないわけではない。店主たちは、残業削減によって本屋に立ち寄る余裕や、子どもと遊ぶ時間、犬の散歩をする時間ができるなど、それぞれ良い結果もあり、めでたしめでたしの様相で番組は終わっている。
ただ、山本社長は「頑張ったら給料が減ったという仕組みには絶対ならない。そこは安心してください」と語っていたものの、具体的にどうするか明言はなかった。確実な昇給や賞与アップなどを聞いて安心したかった、と考えたのは、筆者だけではないだろう。