県健康長寿政策課の担当者によると、高知独特の文化ともいえる「献杯」は、飲みの場で相手に渡したお猪口に酒を注ぎ、飲んでもらうお酒の作法。通常はその後、返されたお猪口に酒を注いでもらって飲む「返杯」と一緒に行われることが多い。つまり、一つのお猪口を複数人で使うことになる。
高知の飲み会の場ではごく当たり前の光景で、上司と部下、同僚同士などを問わず、誰とでも行うという。同担当者は
「飲み会の途中で席を移動した後や、たまたま居合わせた他の客との間でお猪口を交わすこともある。誰もが経験するコミュニケーションの一種です」
と語る。最近ではお猪口だけでなく、グラスを使ってビールで行うこともあるそうだ。
「献杯の受け手となると断りにくいのが高知の県民性」
こうした文化を自粛する異例のお願いを出したことについて、同担当者は「同じお猪口を複数人で使い回すという観点から、感染症のリスクは否定できない」と説明する。また、県主体で呼び掛ける理由としては
「献杯の受け手となると、抵抗があっても断りにくいのが高知の県民性。自粛ムードを高め、コロナウイルス感染防止の意識にもつながれば」
と狙いを語った。
とはいえ、同担当者も「献杯・返杯は通常の風景だったので、なくなると少し寂しい気持ちもあります。早く収束してほしいですね」とコメント。酒を通じて、誰とでもすぐに仲良くなれる高知県の文化にも、新型コロナウイルスの影響が出ているようだ。