堀江氏は、最近ビジネスの場でもプレゼンの資料やテキストの作成に、パソコンを使う必要がなくなったという。これらの整理や作成も、スマホアプリで何の不自由もなく使うことができるようになり、
「もはや、会社の会議室や行きつけのカフェで、ノートパソコンを片手にウロウロする時代は終わったのだ。」
と断言する。
しかし、クリエイターやプログラミングの世界ではまだまだと感じる人もいるだろう。堀江氏はそんな考えも見事に打ち砕いていく。クリエイターたちの世界でもパソコン離れが始まっており、今ではスマホから、パソコンで作った作品と遜色ないレベルの優れた作品が、次々と生み出されているという。その代表例として挙げたのが、全編 iPhone で撮影されたスティーブン・ソダーバーグ監督の映画「Unsane」だ。
プログラミングの世界も例外ではなく、 近年はスマホアプリでも優れた入門・練習ソフトが増えてきている、としている。そのため、
「スマホしか触ったことのない若いエンジニアたちが、グローバル企業に採用される時代が来るのも時間の問題だろう。机に向かって背中を丸め、黙々とパソコンに向かっていれば価値を生み出せる時代は終わった。とにかく外へ出よう。好奇心に動かされるまま行動して、経験を積み重ねることで、『自分だけの価値』を発信していこう」
と薦めている。近年は「パソコンができない新入社員」が話題になることがあるが、現実には”企業の方が遅れている”と考えることもできるのだ。
スマホの性能はすでにパソコンを超えているという堀江氏は、パソコンでないとできないようなタスクは意識的に減らしており、「もう使うことはないだろう」とまで書いている。この言葉は、スマホが単なる「ツール」であるという考え方を象徴している。ウェラブル端末の今後の進化を予測しているように、もっと良いデバイスが出れば躊躇なくそちらに移行するだろう。学ぶべきは、テクノロジーに振り回されることなく、能動的にこれを使い倒す姿勢だ。
「スマホ時代を生き抜くスキル」を子どもに知ってほしくなる
世間ではスマホ依存が度々問題になり、「脳の活性力が下がる」などと話題になる。だが、堀江氏は「それで脳の働きが悪くなるとしても、それはスマホ自体が悪いのではなく、使い方の問題」と指摘する。
他の著書でも説いているように、限られた人生の1分1秒たりとも無駄にしない主義の堀江氏は、本書でも電話や会って話そうとする人をほとんど憎悪している。堀江氏が教えるビジネスコミュニケーションは「メールは即レスする」「一度に3つ以上の用件を書かない」「SNSのアプリ(LINE、Slack、Messengerなど)で仕事を回す」「無駄な挨拶はしない。冷たいと言われても気にしない」のがポイント。これはスマホを使って時間を効率化することの一例だ。
「スマホは時間を効率化し、優れた情報を得ながら、魅力的なプランやアイディアを発信していくもの」
という堀江氏。大切なことは、取り入れた情報を自分のアイディアと有機的につなげて生かしていくことだと、重ねて説いている。
他にも「貯金はするな、スマホで稼げ!」と、貯金を唾棄すべき習慣のように説いており、面白い。すぐに真似できる英語の学び方や受験勉強の仕方、ファッションや恋愛にもスマホが有効だという興味深い内容が「35のスキル」として紹介されている。
主に若者に向けて書かれているが、中高生の子を持つ親世代にも読んでほしい。本書を読めば、香川県が条例化した「スマホやゲームは1日1時間」といった議論が、いかに的外れであるかが見えてくるからだ。むしろ、きっと”スマホ時代を生き抜くスキル”を我が子に知ってほしくなるだろう。