NHKの報道によると、全国では4月以降、すでに85のパチンコ店が閉店、事実上の倒産をしたという。地域によっては丸々3か月近く営業を自粛していたケースもあるので、弱小パチンコ店の経営は耐えられなかったようだ。
しかも、長期間の営業自粛を率先して行っていたのが、マルハン、ダイナムなどの大手だ。世間的には「大手ですら営業を取りやめているんだぞ」という批判を弱小に向けやすい風潮にもなっていたので、これも災いしたように思う。
特に、都内では11店舗が新型コロナ禍の最中に店じまいをしたとのことで、全国で最も多い数字となっている。店舗関係者は取材に対して、「運転資金がもたずもはや限界だった」と答えているのが悲しい。
都からの営業自粛に対する感染拡大防止協力金は最大100万円。居酒屋であってもこの金額は少ないものだが、パチンコ店ではまさに焼け石に水。100万ぽっちで営業自粛なんて無理な話なのだ。
生き残れるのは大手ホールだけ? 個性のあるホールが死んでしまう
東京都遊技業協同組合(以下:都遊協)は5月25日、緊急事態宣言解除後の方針を決定、組合員のパチンコホール各店舗に通達したという。
都はこれまでも、パチンコ店舗の営業自粛を強く要請してきたが、政府の緊急事態宣言解除後は独自のロードマップを作成。パチンコ店に対して、もう1か月程度の休業要請を継続するとの意向を示したのだ。
しかし、パチンコ業界情報サイト「グリーンべると」が25日に掲載した記事によると、都遊協はとうとう都に歯向かう姿勢を示した。組合員ホールに対し、休業要請や要望はせず、「各経営者の判断に委ねる」としたというのだ。
十分な補償がないだけでなく、感染拡大防止協力金も未だ届いていない。廃業に追い込まれそうなホールが増える中で、さらなる休業は受け入れられない、と判断したという。
都遊協がここまで憤るのも分からないでもない。これは私見になるが、そもそも小池百合子都知事の言動は歯切れ良いものだから、何となくみんなが「ああ、仕事してるなぁ」と感じてしまう。でも、実際にはパチンコ店だけに限らず、飲食店やその他休業に応じていた人々にもまだ十分な支援ができていないのが現状だ。
都遊協の幹部たちも当然、このような声明を出す以上覚悟はできている。都知事からの要請自体は尊重すべきとしつつも、東京都認可の組合としての協力要請をこれ以上は全うできないことを理由に、理事長と副理事長は総辞職する方針だという。
僕は、今はもうパチンコ・パチスロ業界とは関係ない立場だけども、元々はパチンコホールに就職していたし、解析攻略サイトにも在籍していた時期がある。なので、都からのたびたびの理不尽な要請に、困惑する現場を見てはどこかしら心を痛めてきた立場だ。
そういう立場からすると、ゴールのない地獄のようなレースをパチンコ店にこれ以上強いると「これはもういじめでは?」と感じる節もある。別に業界の味方をするつもりもないんだけど、営業自粛を抜けて生き延びるのは大手だけだ。中小、弱小店舗はもう本当に厳しい。
店によっては既に「今更営業再開したところで…」ということもあるだろうし、恐らく廃業するホールはもっとこの先増えるだろう。85店舗で終わりなんてことには、決してならない。都心部ではもっと閉店するはずだ。そうなってしまえば大手ばかりが席巻するパチンコ業界になっちゃうわけで、それってどうにも健全とは思えない。
もちろん大手には大手のメリットもあるんだけど、パチンコは遊技なので、遊ぶ場所のバリエーションや機種構成も大事になる。この選択肢が狭いというのは世界を無駄に小さくしてしまう。体力のある大手ホールグループばかりが生き残って、個性のあるホールが死ぬというのは、僕は納得できない。都遊協の今回の決定は、個人的には真っ当なものと感じている。