曽和氏は「まず、1にも2にも『言語化』です」と語る。もともと言語化スキルは、受託企業やフリーランスといった遠隔で働く人々にとっては必須だった。今後はテレワークで働くすべての人が求められるようになる。
「仕事上のコミュニケーションで曖昧さを残さず、きちんと明確に言語化(数値化を含む)する力が、フリーランス『的』な働き方に近くなる正社員にも求められるように思います」
さらに、正社員として差別化を図るために挙げるのが「リモートトラスト」と呼ばれるスキルだ。リモートトラストは、オンライン上の相手との間に築く信頼関係を指す。取引先との初対面もオンラインで、というケースも増えてくるだろう。曽和氏は
「リアルで会って、膝を突き合わせて話し、酒を飲んで、徐々に培ってきたトラスト(信頼感)をリモート環境でいかに作れるかということです」
と説明する。確かに、これまでの日本人の信頼関係は、実際に相手に会って対面でコミュニケーションを築くもの、という考え方が一般的だった。今後は「杯を交わす」「裸の付き合い」といった信頼関係の築き方は、時代遅れになってくるかもしれない。
曽和氏は、リモートで信頼関係を築く上でも”言語化”の重要性を強調する。
「特に『文学的な言語化』、コピーライターのようにテキストベースでも、心に響く言葉が吐けるかどうかということが重要だと思います」
「IT業界のようにその時に必要な能力が欲しい場合は正社員よりフリーランス」
中長期的にみた時に、国内企業の正社員の割合は減っていくのだろうか。曽和氏は「社員個々の専門性(ノウハウの蓄積)が必要かどうかで変わってくると思います」との見解を示す。
「メーカーのようにノウハウの蓄積が重要な会社では、正社員化が維持されるかもしれません。一方でITのようにどんどん技術が代わり、蓄積というよりはその時に必要な能力を欲しいということでしたら、正社員でなくフリーランスの人と都度プロジェクト形式で付き合っていくことは増えると思います」
業種ごとに当然、その”正社員”に要求される能力は変わってくる。現在、正社員が担っている業務を外注に移行する場合、業種によっても差が生まれる可能性はある。
ツイッター上でも「今の騒動が収束しても、疲弊した分また不況で正社員不要論出て派遣の嵐になりそう」などと心配する声も目立つ。多くの企業で今後、テレワークを中心にした働き方にガラリと変わる可能性がある。正社員である自分の立場を守るため、また正社員としての就業を目指すために、今から準備できることはありそうだ。