帝国データバンクは6月15日、「新型コロナウイルスの感染状況」に関する調査結果を発表した。調査は上場企業を対象に実施し、同月12日までに公開されたプレスリリースなどを元にまとめた。
従業員の新型コロナウイルス感染を発表した上場企業は累計377社にのぼった。2月から数が増え続け、3月は新たに90社超、4月には240社超が公表。一方、5月に入ってからは新規感染者を発表した企業は月間累計16社にとどまり、大幅に減少していた。
製造業はバックオフィスだけでなく、工場勤務従業員の感染も相次ぐ
業種別にみると、「製造」(129社)が約3割を占め、最多だった。次いで「サービス」(64社)、「小売」(45社)、「卸売」(36社)、「運輸・通信」(31社)などが続いた。
製造業界では、自動車や機械、化学、食品など幅広い分野で感染者が発生。本社従業員などのバックオフィスだけでなく、工場勤務の従業員の感染も相次いでいる。
緊急事態宣言の発令に伴い、サービス業などの非製造業と比較すると導入率は低位だったものの、多くの製造業企業が在宅勤務を導入した。
テレワーク可能な部署の在宅勤務導入や、生産部門のローテーション勤務が進み、自社従業員の感染リスクを低減した。また、5月の大型連休前後で、一斉休業措置を取った企業も多く、従業員に感染抑止に貢献したとみられる。
小売業やサービス業でも、不特定多数の消費者と接触するスーパー、飲食店などでは、従業員のマスク着用を徹底するなどしたものの、感染者の発生が相次いでいた。
だが、緊急事態宣言の発令後は、入店制限やレジ待機列の感覚確保といった”ソーシャル・ディスタンス”の取り組みの強化、レジの飛沫防止ビニール設置、イートインスペースの閉鎖などより強力な措置を取る企業も多くみられた。
緊急事態宣言に続き、東京アラートも解除され、飲食店などの休業、営業時間短縮の要請が順次解除された。街にも人出が徐々に増加するなど消費・企業活動ともに再開に向けて動き始めている。
「従業員の防疫意識に頼った水際対策のみでは、再び感染者発生を増加させかねない」
同社は、今後の懸念点として「企業の従業員感染リスクが再び高まらないか」を挙げる。多くの企業では新規感染者の発表がないものの、製造と小売の両業種では、緊急事態宣言の解除前後で再び増加ペースにある。
ほかにも、既に感染が判明していた企業でも、別店舗、工場で従業員が罹患するケースが散発している。
いずれも従業員のマスク着用など可能な限りの感染防止策が取られていたが、業種によっては、比較的”3密”を満たしやすく、感染リスクの高いものもある。同社は
「勤務体制の見直しなどの抜本的な対策を抜きにした、従業員の防疫意識に頼った水際対策のみでは、再び企業での感染者発生ケースを増加させかねない」
と警鐘を鳴らしている。