「老いることをどう捉えているか」という質問に対しては、46歳のイチローさんが「20歳の時と同じ肌ツヤとか、見た目だったら残念ですよ」ときっぱり。「やっぱりそれなりに年を重ねたんだな、という雰囲気はほしいです」と答えた。
一方で「エネルギ―は老いたくない」という。人と久しぶりにあった時に「この人、エネルギーがなくなったな」とその人が発する空気感の変化を感じることがあるといい、
「見た目は白髪にだってなるし、いろいろなことが変わってきます。それはそれでいいんです。ただ、エネルギーが老化した時は嫌でしょうね」
と自身の気持ちを語った。
感情的にならないためには「目の前で起きた事のその先を考える」
「感情のままに怒ってしまう」という母親ならではの悩みに対しては、自身の野球経験を引き合いに出して答える。「まず、感情的になったら絶対負けるということですね。冷静な奴には敵わないので」と結論を述べた上で、
「野球って、ヒット打ったらめっちゃ嬉しいんですよ。でも、それが相手に見えると、なんかつまらない選手に見えるんですよね」
相手の選手を観察していても「あいつ、こんなヒットで喜んでいるな」と底が知れる感じがしてつまらないという。逆に、感情に出さない相手選手に対しては「ここで打っても喜ばないのか」「ここでも悔しい表情ださないのか」と感じさせられ、相手としては嫌なようだ。イチローさんはこうした経験を踏まえ、
「だから、僕は常にそれを意識して、腹立つことがあるけれど、それをぐっと抑えて……という訓練を日々していました」
と話す。
また、日本が連覇を果たした2009年のWBCの韓国との決勝戦で、試合を決めたセンター前ヒットを打った時のことも振り返る。塁間を走りながら「どういう振る舞いをしたらいいか」について考えていたといい、
「ダッグアウトを見ると、きっと日本チームみんなが喜んでくれている。だがら、見ちゃダメだと思ったんですよね。見たら、僕もそれに応えなきゃいけない」
と裏話を明かす。さらには
「相手にとって一番の屈辱は何かって考えた時、それは僕が喜ぶことじゃないと思った。いつも通りしていたら、それはもうこいつには適わないと思うとしたらそれだと思った」
などと語り、相手側の戦意喪失を狙った演技だったという。イチローさんは
「目の前で起きた事のその先のことを考えるんですよ。そうすると、わりと冷静になれます」
と助言していた。