海水淡水化分野で世界トップの酉島製作所 技術力や社会貢献を重視して次世代の成長を担う人材を募集

酉島製作所 サポート本部 HR部長 長木文著(ながき・ふみあき)さん
1919年、大阪市にポンプ専門製作工場として創業した酉島製作所。100年以上にわたってポンプ一筋で事業を行い、戦後日本のインフラ整備や産業発展に大きく貢献してきました。1990年代以降はインドネシアを皮切りに、アジア、欧米、中東など世界各地に現地法人や合弁会社を設立し、グローバルな事業展開を推進しています。
2020年には経済産業省が選定する「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」に認定。世界各地の海水淡水化プラントにポンプを納入し、水インフラ課題の解決に貢献する同社は、いまどんなポジションでどんな人物の採用に注力しているのか。同社サポート本部 HR部長 長木文著さんに話を聞きました。(文・構成:キャリコネニュース編集部)
海外事業が6割強のグローバルメーカー

酉島製作所の本社オフィス
――御社は現在どのような事業を行っていますか。
当社はポンプの専業メーカーです。事業領域は、上下水道や雨水排水、かんがいなどの「公共事業用ポンプ」、工場やビル・商業施設、化学プラントなどの「産業用ポンプ」、火力・地熱発電所の「発電プラント用ポンプ」、それに「海水淡水化プラント用ポンプ」の開発製造、およびメンテナンスサービスの提供です。
当社が手がけるのは主に大型インフラ向けで、重要設備にポンプを納入しています。特に水は人間の生活に欠かせないものですので、社員一同、社会インフラを支えている誇りをもって、メンテナンスを含めたトータルでの支援を行っています。同時にポンプは多くの電力を消費するため、効率向上の技術開発にも取り組んでいます。
2024年度の受注額では、全体の6割強を「海外向け」の海水淡水化プラントや火力発電所、上下水道施設やかんがい施設などが占め、2割強が国および地方公共団体向けの「官需」、1割が火力発電所などの「民需」です。さらに近年は水素やアンモニアなど次世代エネルギー向けポンプの開発にも注力しており、市場参入する予定です。

酉島製作所の事業領域(「2024年度連結決算説明資料」2025年5月14日より)
――海外が6割以上を占めているのですね。
当社が最も誇れるのは、海水淡水化用ポンプで世界ナンバーワンのシェアを持っていることです。この分野は大量のエネルギーを使用するため、エネルギー効率の高いポンプが求められます。海外の競合メーカーとの競争でトップポジションを獲得しています。
海水淡水化では、水分子だけを通すRO膜(逆浸透膜)に、非常に高い圧力をかけて海水を送水します。従来の蒸発法と比べてエネルギー消費が少なく、世界中の水不足対策として急速に普及しています。このときに使われる高性能ポンプが当社の技術領域で、水を500メートル押し上げるほどの大きな力を生み出します。
開発途上国では水と電気インフラの整備により産業が発展するため、中東を中心にアフリカ、インドなどへ展開を進めています。特にアフリカでは、近年太陽光発電が安価になり、電力を確保できる国が増えました。このため「次は水だ」ということで、海水淡水化需要が急速に高まっています。
特に北アフリカのサハラ砂漠北部ではプロジェクトが大幅に増加しています。今後は米国市場への展開も視野に入れていますが、どの市場でも技術力を活かしてアプローチする基本姿勢は変わりません。海外拠点も、グローバル展開におけるサービス・メンテナンスのサポート体制強化のために順次増やしています。
中期経営計画を「7年前倒し」の急成長
――現在どのような中期計画を推進していますか。
創業110周年の2029年度を見据えて、2021年度に中期経営計画「Beyond110」を策定しました。社会インフラを支えるポンプメーカーとして、事業成長と社会貢献の両立、2050年カーボンニュートラル実現への貢献を目標に掲げています。
具体的には、高効率ポンプによる省エネ推進や次世代エネルギー向けポンプの提供、水不足、食糧不足を解決するポンプの提供、気候変動対策向けポンプによる減災技術の推進、そしてデータに基づくスマートソリューションの提供などを推進しています。
当初目標では、2029年度に売上高600億円以上、営業利益50億円以上を掲げていましたが、2022年度に7年前倒しで達成しました。これは、想定外の海外大型案件が寄与したこともありますが、収益体制の強化に向けた様々な取り組みが奏功した結果です。そこで新たに、売上高1,000億円以上、営業利益率・ROEを10%以上という目標を再設定しています。

グローバルに展開する酉島製作所の事業(「2024年度連結決算説明資料」2025年5月14日より)
――前倒し達成の要因はどのようなものですか。
主要因は海外事業の拡大です。エジプトではコロナ禍の影響で大型の農地開拓プロジェクトが前倒しとなり、大型灌漑用ポンプの発注が行われました。世界的にサプライチェーンが混乱する中、素材製造から最終製品まで社内で完結できる当社の一貫生産体制が評価されました。
アルジェリアでも深刻な干ばつで暴動が起きかねないほどの水不足が深刻化し、大型の海水淡水化プラントを一気に建設する必要に迫られました。当社はこのプロジェクトでも4つのプラント向けに計143台のポンプを納入し、さらなる受注が予定されています。これまでの中東での実績により信頼が継続していたことが大きく影響しました。
また、海外のボリュームが大きいため目立ちませんが、国内事業も着実に伸びています。官需では、老朽化した排水設備の更新需要が堅調で、大雨時の浸水対策などの国土強靭化の一環として4、5年前と比較して約3割増しで受注しています。民間企業向けも堅調に増加している状況です。
AIを使った業務効率化を推進できるITエンジニアを募集
――採用の場面でもグローバル化の影響がありますか。
外国人従業員の割合は、グループ全体で約4割、国内本社でも10%にのぼります。工場では30年ほど前から技能実習生を受け入れ、技術職でも外国人技術者の直接採用を4、5年前から行っており、現在約30名が働いています。イスラム系の方が多く、お祈りルームやハラルフレンドリーな食事など宗教的配慮も含めた支援体制を整えています。
あわせて人材の多様化を進めており、女性活躍にも力を入れています。十数年前まではいわゆる一般職の採用しかありませんでしたが、現在は管理職候補として積極的に採用・育成し、技術系や管理系で多くの女性が活躍しています。
――採用にあたって重視される点はどこですか。
キャリア採用では、スキルと経歴を重視しています。これまでの経験を活かしてチャレンジしていただける方を求めていますが、協調性を兼ね備えた方が理想的です。行動力も重要で、提案だけでなく実際に行動して物事を動かしていただける方を評価しています。
採用には、ポンプ事業の高い社会貢献性を認識してもらうことが大前提となります。当社は「私たちはポンプを愛し、世界によりよい変化を生みだすために、進化し続けます。」を経営理念に掲げており、価値観を共有してもらえる方と一緒に働きたいと考えています。

スマートソリューションの取り組み(「2024年度連結決算説明資料」2025年5月14日より)
――具体的に採用に注力しているポジションはありますか。
情報システム系では、事業計画上の重要課題に「データ・AIの活用による新しいモノづくりとサービスの構築」を掲げており、この領域を担う人材を求めています。基幹システムの刷新や、AIを使った業務効率化やアジャイル手法によるスピードアップに取り組んでおり、若手から管理職、プロジェクトマネージャーまで経験者を幅広く求めています。
機械設計では、機械工学に携わった設計者を採用しています。理想的には流体力学の経験者ですが、直接的なポンプ設計経験者は少ないため、内燃機関、コンプレッサー、モーター、減速機などの関連分野で構造設計やシミュレーション経験をお持ちの方も対象としています。
営業系は、現在は欠員補充レベルですが、民間のプラントメーカーへの技術提案や工場への直接アプローチができる営業経験者を求めています。単純な法人営業ではなく、技術的な内容を理解して提案できる方が理想的です。どの業種から来ていただいても育成していきますが、すでに技術提案経験をお持ちの方は大変ありがたいです。
選抜社員がインドを訪れる「弾丸ツアー」も
――キャリア採用の活躍を支援する取り組みはありますか。
キャリア採用者には集合研修を実施しています。会社の取り組みや考え方の共有、事務手続きに加え、実際のポンプメンテナンスを行うトレーニングセンターでの実習も体験してもらいます。
配属後はチューター制度を設け、若い方には相談相手となる先輩をつけています。今年からは年代別のキャリアデザイン研修を開始し、20代、30代で新卒・キャリア採用を問わず、横のつながりを作りながら将来のキャリア設計を考える機会を提供しています。
オンボーディングは、誕生月の全社員を集めたパーティーや、部門を越えた交流会への補助制度も設けています。2部門以上の人たちが集まった交流会には月1回、1人3000円の補助をするなどコミュニケーションを促進する制度を整えています。

トリポンスクールの様子(酉島製作所提供)
また当社は、独自の社会貢献活動と人財育成プログラムを展開しています。トリシマポンプから名前をとった「トリポンスクール」は、本社や工場周辺の小学校を対象に、20~30代の若手社員が講師となって出前授業を行うプログラムで、子どもたちにものづくりの楽しさや水の大切さを伝えています。
授業では、クイズやアニメーション、手押しポンプの製作体験などを通じて、子どもたちの興味を引き出す工夫がなされています。授業の企画から運営までを若手社員が主導することで、彼ら自身の成長や主体性の向上にもつながっています。授業の最後には、同社の工場で製作されたトリポンメダルが児童に贈られます。
「弾丸ツアー」は、勤続10年程度の30~40代社員を中心に、選抜社員がインドを訪れる海外研修です。現地のポンプ場や関連施設を約1週間にわたり見学し、当社の製品がどのように社会インフラとして活躍しているかを体感します。また、インドの文化や現地スタッフとの交流を通じて、グローバルな視点や異文化理解を深めることも目的としています。
「奨学金返還支援制度」は若手社員から好評
――特徴的な福利厚生制度はありますか。
一般的な有給休暇に加え、当社独自の「ファミリーサポート休暇」として8日間を設定しています。これは家族関係(配偶者、子ども、親など)で何かあった際に有給とは別枠で利用できる制度で、キャリア採用者は入社と同時に利用可能です。
昨年からは「奨学金返還支援制度」を始めました。月額1万5千円を15年間、最大270万円まで会社が肩代わりします。給与支給だと税金や社会保険料が差し引かれますが、当社が直接支払うため、社員は税負担なしで借金を減らすことができます。社員になったらいつでも申請可能で、福利厚生として大きなインパクトがあると考えています。若手の方からは非常に好評をいただいている制度です。
福利厚生も充実していますが、何よりチャレンジ精神を持って、「この会社で何かをやってやろう」という意気を持って来ていただける方を募集しています。高い志を持ち、挑戦が自分の成長につながると考えられる方に、ぜひ来ていただきたいと思います。

酉島製作所の長期ビジョン(「2024年度連結決算説明資料」2025年5月14日より)
当社は安定性・堅実性も備えながら、現在高い成長を遂げている会社です。急成長に伴い、人材や設備への増強が急務となっていますが、私たちはこの状況を更なる発展への好機と捉えています。成長フェーズでこそ社員1人ひとりの貢献が会社の発展に直接影響する、非常にエキサイティングな時期だと考えています。
本社オフィスは壁のないオープンな建物で、物理的な壁がないことで組織的な壁もない雰囲気を作り出しています。役員室もなく、トップも取締役も一般社員と同じような席に座っている、かなりオープンな環境だと思います。

酉島製作所のキャラクター「トリポン」のぬいぐるみとともに
当社のホームページを見て応募される方は、技術営業や現場での地道な仕事の価値を深く理解して来られるため、大きなミスマッチは少ないと感じています。売上至上主義的な企業を求める方は少なく、技術力や社会貢献を重視する方が多いのが特徴です。
採用において、これまでの経験やスキルは重要な要素ですが、それだけで判断することはありません。第二新卒のような方で適切な素養をお持ちであれば、ポテンシャルを評価して新卒と同様の研修に参加していただくこともあります。ぜひ当社で働くことを検討してみてください。


