「部下に学ばせる気のない管理職」は、チームをダメにしてしまうという話
「仕事が忙しくて研修なんか受ける暇はない…」
「日々の仕事に疲れていて読書する気力も湧かない…」
「自己啓発?いつやれと言うのか…」
私が実施しているキャリア研修の中で、このような声が毎回聞かれます。人的資本経営がうたわれている昨今、年代別のキャリア研修の見直しを進めている企業が多く、私のところにも、キャリア研修見直しの相談が数多く来ております。冒頭の声は、40代向け研修の中でよく語られる言葉です。学びに対して、皆様の心の中にはどのような言葉があるでしょうか。今回は、「管理職の学ぶ姿勢」が、職場に与える影響についてご紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
コロナ禍での、学び意欲の現状
2020年に日本生産性本部が出した、「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」によると、将来の不安に対し学びを始めたり、始めたいと思っていたりする人が増えているようです。全体のデータでは、コロナ禍で自己啓発を「始めた」は8.8%で、「始めたいと思っている」が30.1%でした。年代別に見ると、20代では自己啓発を「始めた」18.8%、「始めたいと思っている」35.4%、合わせて54.2%が積極的な姿勢を見せています。しかし、50代では自己啓発を「始めた」6.1%、「始めたいと思っている」25.1%、合わせて31.2%と年齢が高くなるにつれ、そのポイントは低下しています。
上司層の学びへの消極的姿勢は、若手の学びへの積極的姿勢に影響を与え、若手の成長の芽を摘んでしまう可能性があります。私がかつて所属していた営業組織でも、上司の学びへの姿勢によって、その組織のメンバーの学ぶ意欲に差が出たことを経験しています。上司の姿勢が若手に影響を与えていくのです。
部下が学ぶ事の効果とは?
ある調査によると、人の成長を促すものとしては、仕事・薫陶・研修が挙げられており、それぞれのウェイトは仕事を通しての成長が70%、上司からの薫陶(言葉)によるものが20%、研修によるものが10%と出されております。研修やセミナーに参加するだけでも、10%もの効果を得る事ができるのです。
研修やセミナー等での学びの効果としては次のようなものが挙げられます。
(1)知識の向上が、自身の有能感を高め、やりたいことが広がる。
(2)知識の向上が、更に学びたいことに気づかせる。
(3)学びの場で人脈が広がり、仕事の効率化を生み出す。
(4)広がった人脈から、自身のやりたいことへの気づきが広がる。
(5)参加者の仕事への積極的姿勢が醸成される。
学びによって出来る事が増えると、セルフイメージが向上し、様々な業務にチャレンジする態勢も整ってきます。また、学びの場での出会いは人脈を広げ、仕事の幅をさらに広げてくれるものになっていきます。これは組織成果にもつながっていきます。
管理職が学ぶ姿勢を見せる
部下が学ぶ意欲を向上させていくためには、上司自身が学びに対して積極的な姿勢を示していく必要があります。自身が学び続けながら、部下の学ぶ機会創出に力を注いでいくのです。前職時代に、「研修になんか行かせる暇があるなら、外回りさせろ!」という姿勢の上司がいましたが、その組織は短期的な成果は出せていましたが、すぐに成長が鈍化し、成果の出ない組織になっていきました。
若い方々を中心に「成長実感」への欲求は強く、研修やセミナーに参加できることは一つの動機づけポイントになっています。若手が学んだことを仕事に活かして、さらに成長を感じられるようになれば、職場への定着促進にもつながります。
以上、管理職の学びの姿勢が、部下のやる気や成果を高めていくことについて紹介してまいりました。忙しい管理職の皆さんですが、自身でも学びを進め、学んだことを部下に伝えていきましょう。そのことが部下の成長を通じて、組織成果につながることを信じて!