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「みんなちがって、みんないい」職場を実現するために 「譲れないもの」をひとつ作るべきだ

昨今、様々な企業で「多様性」≒「ダイバシティ」を重視すべきということになっています。事業運営において企業が環境の変化に対応するためには、環境と同程度の多様性を組織内にも持っておかねばらない(例えば年齢構成や男女比等)という側面があるとされます。

人々の個性を最大限に尊重する人権保護的側面からも「組織は多様性を保持すべき」ということになっていて、あらゆる場、メディアなどで「多様性」は賛美されています。金子みすずの有名な詩にあるような「みんなちがって、みんないい」という価値観は、私も大好きです。しかし「多様性のある職場」は「働きやすい職場」と言えるでしょうか。(文:曽和利光)

価値観が対立すればイライラするのがふつう

職場はみんなちがって、みんないい?!

私は「多様性」の必要性に異論はありません。ただし「多様性のある職場」は「働きやすい」素晴らしい世界≒パラダイスであるというナイーブな考え方には違和感があります。というのも多様な職場は、違う考え方、価値観の人がすぐそばにいる職場だからです。

人は自分と同じ考え方を持っている人と気が合い、違う価値観の人とは気が合わないのがふつうですが、多様性のある職場とは、自分の考えと合わない行動をとる「イライラする」人々がまわりにたくさんいる職場です。そんな職場は、まあまあストレスフルな職場ではないでしょうか。

例として、これまで私が見てきた職場でありがちな価値観の対立を挙げてみましょう。地道な作業をコツコツとこなすことで技術が磨かれて良い仕事ができると考える職人気質な人は、業務の効率性を大切にしてゴールに最も近い道を進もうと考える人のことを怠け者と考えるかもしれません。

仕事に情熱を燃やし人生の大部分を捧げている人は、プライベートと仕事を両立しようとするワークライフバランス重視派を、仕事の真剣味に欠ける人と見るかもしれません。ストレートに物事を言い合って議論することを望む人は、協調性を重視してみんな仲良くしていこうという人から見れば、他人の気持ちの分からない鈍感で非情な人に見えるかもしれません。

新しいことをどんどん開拓していきたい好奇心旺盛な人は、一つのことをじっくりと掘り下げて深めていく人にとって、食い散らかすだけの適当な人に見えるかもしれません。これらの対立する価値観のどちらが適切かはケース・バイ・ケースであり、それぞれに理があります。しかし、双方から見れば「イライラする」存在であることは多いのではないでしょうか。

時代の波に飲まれず「うちはこう」という軸を定める

ではどうすればよいのでしょうか。多様性のマネジメントは大変難しいもので、究極的には相容れない価値観もあります。だから私は、逆説的かもしれませんが、何でもかんでも「多様性」=「善」とはせずに、「この価値観は絶対に譲れない」≒「多様性を認めない」という領域をはっきりさせることが、最もシンプルでベーシックな解決策ではないかと思います。

その際には、「時代の波」に飲まれてはいけません。例えば最近ではリモートワークなどフレキシブルな働き方は良いこととされていますが、もし顔を合わせて長い時間働くことが大切と経営者が思うのであれば「うちは絶対に9時出社、18時退社」「遅刻厳禁」としてもよいでしょう(時間的規律が緩い人が多いWEBベンチャーなどでもそういう会社は結構あります)。

また、率直でストレートなディスカッションができることを貴ぶ会社が増えていますが、議論の効率性を多少損なったとしても「人の気持ちを慮る」「顔を立てる」ことを重視して、婉曲的な表現を用いてコミュニケーションを取ることを重視してもよいと思います(私の会社はそうしています。行動規範の一つに「美しい言葉遣い」とあります)。

ともかく、多様性の度合いが最大である「世の中」というレベルでどう言われていようと、「うちはこう」と何かの価値観をひとつ(もちろん複数でも構いません)定めてしまい、他は排除することが重要です。

そうすることで、他のことの多様性を受け入れるための「共通価値観」が生まれます。共通価値観があればお互いに親近感、信頼感が生まれ、その他の多様性により多少イライラしようとも「許せる」関係になるのではないでしょうか。つまり「多様性のある職場」を「働きやすい職場」にするには、「絶対に多様性を認めないもの」「これだけは譲れない軸」を作ることが必要であると私は思います。

あわせてよみたい:働きやすい職場は必ず「業績のよい職場」になるのか

 

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