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「介護離職」をどう防ぐ? 識者は「仕事以外に大事なことに取り組める働き方」を提唱

10月22日朝のNHK「おはよう日本」で介護離職が取り上げられていました。中央大学が40歳以上の会社員約7000人にアンケートを取ったところ、今後5年間で「介護を担う可能性がある」と答えた人が86.7%にのぼったそうです。

この世代の社員は職場のリーダー的存在であることも多く、離職は現場に大きなインパクトを与えてしまいます。番組では、働きながら介護を可能にするしくみを工夫している3つの会社の事例を紹介していました。(文:板橋やゆ子)

離脱に備えワークシェアで「一人三役」担う会社も

中核人材が抜けたら職場は困る

中核人材が抜けたら職場は困る

最初に紹介されたのは、大手電機メーカーでオーディオ商品の開発に携わる56歳の男性。10人を超えるプロジェクトのリーダーを務め、残業や長期出張などもこなしてきました。しかし昨年、妻が突然認知症と診断され、この男性が介護せざるを得なくなったのです。

幸いこの会社には在宅勤務制度があったため、週2日は自宅で新技術の構想をし、他部署との調整は残りの3日で行うことに。それでも男性は、仕事への不安を隠せません。

「いまは会社の制度や社会福祉制度、職場の協力でうまく両立できているが、やはり余裕がないことは確かなんですよ。これがどこかで崩れることがあるというリスクは、絶えず感じていますね」

2つめは、埼玉県のお菓子メーカー。各人が担当する仕事の明確化とワークシェアを掲げ「一人三役制度」を導入していました。本来の担当業務のほか、2つ以上の業務もできるようにして、他の社員が休まざるを得なくなったときに代わりができるようにするものです。

総務課長の女性は、母親の病気で急な休みや早退をせざるえなくなり、残業もできなくなりました。しかし「勤怠管理や広報、決算資料作成」といった管理職の中核業務を担いつつ、「販売店対応、入金、イベント対応」は代行者に頼むことができます。

「感謝しかないですね。自分の仕事もあるのに私の仕事も手伝って支えてくれたわけですから。もし(同僚に)何かあったら、私も精一杯できることはしてあげたいと思います」

介護離職者もパートを経て復職できる制度を新設

3つめの会社は、兵庫・姫路市の精密加工会社。会社の1割を占める売り上げを上げてきた営業担当の女性は5年前、母親の介護のために15年勤めた会社を「泣く泣く退職」せざるを得なくなりました。介護休業では対応できなかったそうです。

しかし会社はこの女性のために「パート制度」を新設しました。「週3日間、短時間」のパートタイマーをしながら介護をし、フルタイムの仕事ができるようになったら正社員に戻ることができるという制度です。

女性は「戻れるなんてことすら思っていなかった」と明かし、将来復職できることで気持ちが前向きになると語っていました。これらの事例を見ると、ひとつの働き方しか認めてこなかった会社が、ちょっとした工夫で柔軟な働き方を認める動きが出ていることが分かります。

とはいえ冷静に考えると、各社の取り組みはあまりにも当然のことのように思えます。「際限なく残業ができるフルタイムの正社員」以外は戦力として認めない、という従来の日本企業の考えがあまりにも硬直化していたのではないでしょうか。

「仕事と趣味の両立」だっていいはずでは?

これまで日本企業は、社員のことを「気ままに使える奴隷」のように扱いすぎていたように思えます。中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授は、番組の最後で、

「仕事と介護の両立が特別なものではなくて、社員1人ひとりが仕事以外に大事なことに取り組める。そういう働き方にしていくことが大事」

と語っていましたが、非常に本質を突いているように感じました。この「介護」の部分に、地域活動やボランティア、趣味など、それぞれの個人が仕事以外にやりたいライフワークが入っていてもいいはずです。

あわせてよみたい:介護離職ゼロに足りないのは「施設ではなく職員だ!」

 

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