介護福祉士会からクレーム受けた「いつ恋」に励ましの声援あがる 「事実だからしょうがない」「臭いものにフタするな」
フジテレビの「月9枠」で1月から放送されているドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」に対し、公益社団法人日本介護福祉士会が副会長名で意見書を提出した。ドラマ内での介護現場の描き方について「配慮」して欲しいというのだ。
「いつ恋」における登場人物の描き方については、識者からも「いかがなものか」と意見が出されており、この意見書もその線に沿ったものだ。しかし一部の視聴者からは「現実をうまく取り込んでいる」「フジテレビは圧力に屈するな」といった励ましの声も見られる。
林真理子氏が批判「ブラック企業そのままの、あの引越し屋さんも変」
有村架純さん演じるヒロインは、介護施設に勤務している。ドラマでは介護職の若い女性たちが、月収14万円で24時間勤務を強いられたり、職場の上司から突然雇い止めを言い渡されたりする様子が描かれている。
ヒロインとひかれあう男性は引越会社に勤務しており、土下座を要求する客や休暇の取得を拒む経営者など劣悪な労働環境にある。こういった一連の描写は、2月10日に開催された「フジテレビ番組審議会」でも問題になった。
2月13日放送の「週刊フジテレビ批評」は審議会の様子を紹介。脚本家の大石静委員は「『何かこの国は間違っていないか』というテーマ」は迫ってくるが、ラブストーリーらしい爽やかさに欠けていると苦言。作家の林真理子委員もリアリティに問題があるとした。
「職場が過酷すぎて、いくらなんでも看護師の職場、あれだったら訴えられるんじゃないか。ブラック企業そのままの、あの引越し屋さんも変」
「これだけ二人とも素晴らしい容姿をしていたら、ガールズバーへ行くとかショップの販売をするとか、いくらでも楽な労働があるだろうと思ってしまう」
これに対し、番組プロデューサーのフジテレビ村瀬健氏は「日本という国が抱えている社会的な現実を受け止めながら、若い子たちが恋愛をしていく、その両方をうまく描けないかと思って作った企画」と説明。委員の指摘を踏まえ、うつむきながら「少し誇張がすぎてドラマ性を狙いすぎている部分があった」と反省の弁を述べていた。
「介護の現場がかなり現実的に描けている」と支持する声も
「いつ恋」は放送開始以来、「暗すぎる」などと不評で、15日放送の第5話では視聴率が8.8%にまで落ち込んだ。ネットには「いつ恋で出てくる介護現場は環境悪すぎ!あんな施設ばかりじゃないし、知らない人が見て誤解されたくない」といった声があった。
12日には日本介護福祉士会が、内田千惠子副会長の名義で、番組制作責任者宛てに「介護の給与の低さや労働環境の悪さがいいたいわけではなかったことは十分承知していますが、影響の大きさも考えて頂きたい」という意見書を公開している。
その一方で、「いつ恋」が現代社会の矛盾をきちんと描いていると評価する声もある。ツイッターには介護職の現場を知る人たちから、こんな投稿もされている。
「ドラマでは介護の現場がかなり現実的に描けていると思う」
「いつ恋の介護現場 おおげさなようにも見えるけど、まったく大袈裟でもない」
「リアルはもっと酷い。もろにするととても放送できるレベルじゃない」
介護福祉士会の意見書に対しても、「事実だからしょうがない」「つまり現実を広く知られたくないと」「臭いものにフタするな」「寸分狂わずあれが介護の現状だろ」といった批判めいた声もみられる。フジテレビに対し「屈するな」という応援もあった。
きれいごとではすまない現実「今だからこその月9だ」
ただし意見書には、ドラマは真っ赤なウソとは書かれていない。「私(副会長)の知る限りでも(略)それなりの報酬を得ている介護福祉士はたくさんいます」としつつ、むしろ問題の存在を認めている。
「確かに夜勤等をしなければならない事業所もあります」「確かにご利用者への介護の質が悪く、また職員の処遇もよくないところはあると思います」
テレビ局がクレームに屈してしまえば、現実を描いたドラマが葬り去られる。ネットには「(ドラマのせいで)確かに介護資格の人気は落ちるだろうが、多くの人が事情を知れば(労働環境の)改善にも繋がる」などと、「いつ恋効果」に期待する声も少なくない。
「しっかりと現実を見つめてる良いドラマだよ。まさに今起きている事件とリンクしている部分もある。フジは踏ん張れ」
フジテレビ系の月9枠といえば1990年代の「東京ラブストーリー」など、都会的でおしゃれなトレンディドラマが放送されてきた。しかしそのようなきれいごとだけでは、いまの若者には納得されない。「今だからこその月9だ」と評価する視聴者もいた。
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