元漁師が嘆く漁業の課題 「量販店のバイヤーは日本の魚を勉強してほしい」 | キャリコネニュース
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元漁師が嘆く漁業の課題 「量販店のバイヤーは日本の魚を勉強してほしい」

50年前は70万人いた日本の漁師が、いまでは20万人と減少が止まらない。しかもその半数が60歳以上と高齢化が進み、「60代で若手」と言われる状況だ。原因のひとつは、収入の低さにあるという。

千葉県鴨川市に本社を置く総合水産会社のヤマトグループは、魚に付加価値をつけることで漁師も儲かる漁業を実現している。2014年10月2日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、日本の漁業の実情と、行商から身を起こし年商約90億円の総合水産会社を一代で築き上げた鷹松募(たかまつ・つのる)代表の取り組みを紹介した。

元漁師だから分かる「地魚のうまさ」

1006tv鷹松氏の実家は、江戸時代から続く漁師の家。兄は漁師になったが、鷹松氏本人は船酔いがひどく漁師を諦め、15歳で家を出て銀座の寿司屋で7年間修行した。

23歳で故郷の千葉に戻り、魚の行商から身を起こした。地元の寿司屋やレストランに魚を卸していたが、「安くてうまい地魚が獲れた」と言っても使ってもらえなかったという。

鷹松氏は、子供のころから南房総で獲れる地魚を食べていたため、その美味しさをよく知っていた。「こんなにうまい魚を何で使わないのか」と考え続け、19年前に館山に回転寿司店を開いた時に地魚を出したところ、たちまち評判に。地魚ブームの火付け役とも言われている。

現在32店舗の飲食店や鮮魚店を手掛けるヤマトグループの回転寿司では、他店にはないオリジナルメニューがある。例えば、深海魚の「えんざら」は大きな骨のせいで煮ても焼いても食えないと言われてきた。

しかし、ていねいに身を削ぎタタキにすることで「えんざら盛り」という寿司ネタのひとつになった。脂がのって独特の歯ごたえがあり、これを食べた小学生の男の子は、美味しさに目を丸くしておかわりを注文していた。

こうして漁師と板前、卸し、小売り、飲食店と、魚に関わる全てを知り尽くした強みを生かし、ヤマトグループは成長を続けてきたが、鷹松氏は漁業の先行きを憂えていた。

「いい魚を獲って付加価値をつければ漁師は儲かる」

「日本人は魚好きなのに、なぜ漁師が儲からないのか」という小池栄子の質問に、「儲かっている漁師もたくさんいるんです」とした上で、危機的状況を語った。

「漁師の中には、どうしたら魚が高く売れるか研究をしない人もいる。80代の人が多く、年長者の1人船だと技術の継承も出来ない。魚がいないわけではない。獲る人がいない」

鷹松氏は、漁師にもっと稼いでもらおうと、千葉産の地魚の普及に努める一方、サバやアジなどを水揚げ直後に船上で締めるよう漁師に指導、「船上活け〆」というブランド化で魚に付加価値をつけた。

これにより、東京・赤坂で刺身にして出せるほど鮮度が保たれ、3割ほど高値で取引されるようになった。地元の漁師たちは「生活が楽になった」と顔をほころばせ、鴨川市漁協の坂本漁労長はこう語る。

「鷹松さんみたいな人がいるのは一つの支え。自分たちもいい魚を獲って付加価値をつけてもらえれば、まだまだ先の活路があると思う」

さらに鷹松氏は、今まで注目されていない美味しい魚を掘り起こそうと全国を飛び回っている。番組では、北海道の秋鮭を生食用にするため、冷凍技術を駆使する場面も紹介した。

どうすれば儲かるか研究する努力が大切

村上龍が「日本の漁業の最大の課題」について質問すると、鷹松氏は「スーパーや大手量販店が流通をダメにしている。ほとんどが輸入品や加工品で、近海で獲れた魚が少ない」と苦言を呈し、こう続けた。

「バイヤーが日本の魚をもう少し勉強して、これから秋サバなどおいしい魚がたくさん獲れるが、その魚を一生懸命に売ってもらえば漁師も元気になってくると思う」

80代がザラという漁師という職業は、体力に自信がある人が技術を身につければ、定年もなく自分が好きなだけ続けられる魅力的な仕事ではないかと思う。それには収入の安定が課題となるが、どうすれば儲かるか研究する努力を自ら惜しまないことも大切だと分かった。

ただ、目の前の漁に懸命な漁師にそれを求めるのは簡単ではない。鷹松氏のようなやり方や考え方を継承していく人が増えていけば、日本全国の漁師が活路を見いだせる日が来るのではないか。(ライター:okei)

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