「グローバルでオンリーワン」を目指す会社は危ないの? 専門家は「何が悪い」と反論
東洋経済オンラインが就活生に対し、再び「問題のある企業」を示して話題となっている。9月29日付けの記事では、「初任給が30万円を超えていたら、おかしいと考えてください」としていたが、10月6日付けの記事では、
「私たちと一緒に世界を変えよう」
「グローバルでオンリーワン企業を目指そう」
などという言葉が、大企業でもない会社の説明会で飛び出すような場合は「冷静になってください」と、「東洋経済HRオンライン」編集長の田宮寛之氏が呼びかけている。
B2Bでトップシェアの中堅・中小企業もある
就職戦線が終盤になるにつれて、焦りを感じた就活生に対して甘い言葉で近づくブラック企業の経営者が少なからずいると聞く。年末になって慌てて内定をもらった会社に入ってみたら、とんでもないセクハラ経営者だったと明かす女性もいた。
確かに熱い言葉で若者を集める労働集約型の営業会社が、人を頻繁に入れ替えている例もある。しかし人事コンサルタントの深大寺翔氏は、高い志を掲げていても、ちゃんとした中小企業も存在しているのだから、誤解を拡げないで欲しいと釘を刺す。
「中小企業がグローバルでオンリーワンを目指して、何が悪いんでしょうか? どんな大企業だって、もはや国内市場だけでは食べていけない。どちらにしろ日本企業は、オンリーワンの強みをもって、グローバルに展開していかなければ活路はないんですよ」
ネットで「グローバル」や「オンリーワン」を検索すると、収益性や世界市場シェアの高い日本の中堅・中小メーカーもヒットする。経済産業省が選定する「グローバルニッチトップ企業100選」は、そのひとつだ。
「こういった会社は、求人広告におカネをかけないので知名度が低く、就活生の人気もない。しかし独自技術を保有し、B2Bの世界でトップシェアを獲得しているところも多いのです。こういう企業は隠れた優良企業で、将来性も高い。記事で変な誤解が及ばないよう祈るばかりです」
「グローバル目指さない」銀行やインフラ目指すべきなのか
深大寺氏によれば、そもそも東洋経済オンラインが示す選択肢は、大企業・安定志向の傾向が強く、それだけを鵜呑みにすべきではないという。
「もし彼らの指摘を聞いて、『初任給が安く、大企業で、グローバルを目指さない』会社を選んだら、どうなるのか。これってまさに、日本の銀行やインフラ企業そのものじゃないですか? 東洋経済は取材で大企業を相手にしているので、入るべき企業というと自然とそうなるんですよね。でも正直、そうした企業はこれから衰退するしかない。そんな企業を若者に勧めても、しようがないですよね」
それではB2Bの中堅・中小メーカーに、本当に将来性があるのだろうか。深大寺氏は「基本的に日本国内でのモノづくりは厳しい。特に労働集約的なやり方は限界がある」としながら、日本で技術を開発しアジアなど海外で製造するやり方は今後も可能性があるという。
世界的に見れば日本の技術はまだまだ高いし、その技術は大企業ではなく従業員数十人の中小企業が持っていることも少なくないというのが、その理由だ。
「いま、そういう会社では、海外で市場を開拓してくれる若者を募集しています。もし失敗してもキャリアには傷はつかず、むしろ勲章になるほど。そんなモノづくり会社の経営者たちが、高い志を掲げて『私たちと一緒に世界を変えよう』と言っても、私には全然おかしいとは思えませんね」
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