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5年後には「女性管理職だらけ」? 就活生に人気のNTTデータが求める人材は「安定」から「挑戦」へ

前回、就活生にも人気の高いNTTデータの「給与体系」を紹介した。65歳定年制の導入で、より安心して働ける職場環境になったかと思いきや、生涯賃金は変わらないため「昇給カーブ」が抑制され、若手の転職志向が密かに高まっているという。

巨大企業集団のNTTグループの業績を見ると、まさに安泰のようにも思えるが、その中身を見ると将来に向けて不安が残る兆しもあるという。NTTデータに勤める30代前半の男性A氏は、実態をこう説明する。

「連結決算を見ると、ウチって右肩上がりじゃないですか。でもね、実際はそうじゃない。国内だけで見たら、売上は年々減少しているんです。それを補っているのが、海外の企業を買収するM&Aなんです」

「NTTブランド」が通用しない海外市場

NTTデータ大森王ビル

NTTデータ大森王ビル

典型的な日本企業と思われているNTTグループだが、実はグループ全体で約7万人いる従業員のうち、すでに外国人が6割を占めるという。欧州や米国などの先進国でM&Aを積極的に仕掛け、海外の企業を現地の従業員ごと買収している。

一方、東南アジアなどに対しては、現地法人を立ち上げて営業を掛けていくこともある。しかし日本では通用する「NTTブランド」も、海を渡れば知名度はなく、競争の激しさは国内の比ではない。

「ゼロから仕事を取ってこないといけないわけですからね。日本最大のNTTだと言っても、外国じゃ誰も知らないし、ブランドだけで仕事は取れない。現地や欧米のライバルとの競争ですから、海外を担当している社員はかなり大変だと思いますよ」

とはいえ、国内市場が縮小傾向にある今、海外に打って出なければ未来を切り開くことはできない。この現状は、NTTデータが現在求める社員の質にも影響してくる。自ら積極的に仕掛けて受注を取れる「前向きでアグレッシブな人」を求めているのだという。

「これは新卒採用でも中途採用でも同じ。昔みたいに御用聞き営業でやっていれば仕事が取れる時代ではなくて、国内外問わず自分からソリューションの強みをしっかりアピールしないと仕事は受注できません。今ウチが欲している人材は、それができる積極性のある人、ということなんです」

男子学生は「安定」を求めてくるが

この傾向は、最近の新卒採用活動にも表れている。NTTグループのコーポレートカラーは青で、採用説明会のプレゼンなどでも青を全面に押し出していた。しかし、最近のプレゼンのスライドにはあえて「情熱の赤」を使い、若さとエネルギッシュさを強調しているのだ。

これをうけて増えているのが、積極性を前面に出してくる女子学生たちだ。男子の就職希望者は、NTTグループの「安定」を求めてやってくる。しかし女子は、安定よりも「NTTデータでバリバリ仕事をしたい」という野望を抱いている。その差は大きい。

「社内には、積極的な女性が増えています。採用時にも、性別のバランスを考えなかったら、ほぼすべて女子になるんじゃないかと言われるほど(笑)。現時点ではほとんどいませんが、5年から10年後には『女性管理職だらけになるんじゃないか』とビビっている男性社員もいます」

積極性のある人材なら、会社も今後は中途採用を受け入れていくはずだというAさんだが、その一方で、生え抜き以外の人がNTTグループという大きな組織で働くことの難しさも存在すると明かす。

「営業から受注、開発まで自社ですべて担っているので、さまざまな部署の協力を得ないと仕事が進みません。そこで求められるのは、何だかんだ言って社内調整力なんですよね。いかにしてスムーズに稟議を通すのか、他の部署との都合をつけるのか。組織の中でやっていくためには、顔が利く生え抜きの方が中途より仕事がしやすいのです」

そのため、他社で成果をあげた有能といわれる人材が中途採用で入社しても、社内人脈の乏しさによって力を存分に発揮できないこともあり、生え抜きの強みがある。したがって一般的なマネジメント力よりも、NTTデータには少ない「一芸に秀でた人材」の方が活躍しやすいという見方もあるようだ。

カンパニーが違えば「まるで別会社の雰囲気」

ところでNTTデータでは、4つの社内カンパニー制をとっている。公共・金融分野の顧客を扱う「パブリック&フィナンシャルカンパニー」、一般法人を対象とする「エンタープライズITサービスカンパニー」、海外顧客を対象とする「グローバルカンパニー」、顧客を限定せずに特化したソリューションやサービスの営業を行う「ソリューション&テクノロジーカンパニー」だ。

現時点で売上・利益の規模が大きいのは、やはり「パブリック&フィナンシャル」だ。海外展開が進んで全社比率は下がってきているとはいえ、国内で一定の売り上げは確保できるし、これまで会社の屋台骨を支えてきたというプライドも存在感もある。スーツにネクタイという服装も、まさにNTTデータの保守本流といったところだ。

一方、比較的自由なカンパニーもある。職場の雰囲気はまったく異なり、それぞれが「まるで別会社のよう」だという。カンパニーをまたぐ異動は自ら希望しない限りほとんどないため、入社時の配属がある意味すべてを決めるといってもいい。

「イケているカンパニーに配属されれば、もう半分勝ったようなもの。仕事は安定しているし、業績が伸びれば給料やボーナスも順調に増えていきますからね」

会社が得意とするのは、取引先の事業内容をしっかりと理解した上でシステムを作る「擦り合わせ」が必要な領域だ。A氏は「ただのシステム会社ではなくビジネスパートナーとして見てもらいたい」と話す。

従来の成功パターンが「弱み」に転ずることも

しかし、そんな従来の成功パターンも、弱みに転じることがある。最近では機動性の高いIT系ベンチャーが安価で標準的なシステムを売り出して競争が激化している。この新しい競争相手は「擦り合わせ」とは別の領域で勝負をかけている。

社内でも、営業と開発のコミュニケーションが悪いために不採算案件が発生するなど、規模の大きさゆえのマイナス面もちらほら。市場顧客の変化も大きく、最近では国の仕事も随意契約がなくなった。大企業もプロジェクトの丸投げではなく、モジュールごとに分けて発注する動きもある。

これまでNTTデータが享受してきた「うまみ」が減ってしまったということだが、そんな状況だからこそ「積極的でアグレッシブな人材」の獲得や育成は、喫緊の課題というわけだ。「安定してそうだから」という動機で志望しても、通る時代ではなくなったようだ。(文・構成:オフィスチタン)

あわせてよみたい:出産女性が仕事を続けないのは「おじさん管理職」のせい?

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