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「地元が好きという気持ち」でふるさとを守る ベンチャー企業が地域活性化を後押し

民間有識者でつくる日本創成会議が5月に「消滅可能性都市」というリストを公開し、全国1800の自治体のうち約半分の896が「2040年までに消滅する」と名指しされた。簡単には変えられない窮状だが、故郷を守りたいという思いを抱く人々も大勢いる。

2014年10月14日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、地方で生産される農産物などを大都市や海外に流通させることで、衰退に直面する地域をなんとか活性化させようとしている人たちを紹介していた。

補助金に頼らずネットで「出資者」を募る

「ファーボ」のサイトより

「ファーボ」のサイトより

宮崎県日南市は、高品質の「飫肥(オビ)杉」で知られる日本有数の杉の産地だ。ところが、この杉を使った工芸品は知名度がいまひとつ。そんな中、世界に飫肥杉を広めようとするプロジェクトが立ち上がり、代表を務めるのが齋藤潤一さんだ。

齋藤さんが活動資金を集めるために利用したのが、「FAAVO(ファーボ)」というサイトだった。「地域を支援する」目的の人が、事業計画や必要資金をネット上に掲載。賛同する出資者を募って資金を集める仕組みだ。

斎藤さんは241人の出資者を得て、目標を大きく上回る325万円を集めた。今年8月にはニューヨークで行われた世界最大級のギフトショーに、飫肥杉の品を出展。品質が高く評価され、世界からの問い合わせが一気に増えたという。斎藤さんはこう語る。

「FAAVOを使って、本当に良かった。補助金とか寄付(という手段)もあると思うが、僕らは一緒に地域を盛り上げてくれる仲間が欲しかった」

サイトでは資金援助してくれた人たちから応援コメントがあり、お礼に金額に応じたぐい呑みなどの工芸品が贈られた。ファーボを運営するのは、東京・渋谷にあるサーチフィールドというベンチャー企業。2年前にサイトを立ち上げた宮崎出身の齋藤隆太さん(29)は、きっかけをこう語る。

「ファーボのコンセプトは、『出身地と出身者をつなぐ』。自分の地元が好きという気持ち、パワーみたいなものを、自分のふるさとに集約していくことがやりたかった」

地元の人たちも「わしらも頑張らないといけん」

ファーボは、地域支援の活動にこだわり全国で250あまりのプロジェクトを支援してきた。その中に、「幻の果物ポポーを味わって欲しい!」というプロジェクトがある。

島根県美郷町の山間部、比之宮地区は人口271人、その半数以上が高齢者といういわゆる限界集落だ。この地区の山あいや民家の庭先には、ポポーが数多く植えられている。

ポポーとは、マンゴーとパイナップルとバナナを足したような濃厚な甘みで、「森のカスタードクリーム」とも言われる果物。かつては日本全国で作られていたが、収穫時期が短く日持ちしないため幻になってしまった。

地域おこしを担当する美郷町嘱託職員の内山伸昭さん(55)は、このポポーをジェラートにして地域起こしに利用しようと計画した。ファーボで出資を募り、68人から30万円の出資を得た内山さんは、これが地域の人たちの励みにもなったと語る。

「こんな中山間地でも声を出せば応援してくれる人がたくさんいるんだと、『わしらも頑張らないといけん』と言ってくれた住民もいたので、金額には変えられない勇気や力をいただいた」

内山さんは、地元の牛乳で乳製品を作っている店と共同で試作を繰り返し、製品を東京・日本橋の島根県アンテナショップでテスト販売してみることに。用意していた40個は夕刻を待たず即日完売、手ごたえを掴んだようだ。

売りがある地域には生き残る可能性もあるが

内山さんは休耕田で本格的にポポー栽培の準備を始め、「30年先40年先は、ポポーがあるから栄える集落になってくれたらなと思ってます」と話した。

番組ではそのほか、珍しい海外の野菜を作ることで地域の農家に高収入をもたらそうと奮闘する「篠ファーム」の高田成社長(61)も紹介した。人口100人に満たない京都の小府集落が作ったメキシコのハバネロやパラペーニョが、東京で高値取引されていた。

「限界集落がこれ以上広がらないように、何かで歯止めをかけていきたい」

そう語る高田社長は、パラペーニョをピクルスに加工して安定供給を図るなど、農家の収入を安定させる方法を考え続けていた。地域の再生は一筋縄でいくものではないが、自分ができる目の前のことに誠実に取り組む人たちの姿を見て、素直に応援したい気持ちになった。

消滅可能性都市は山間部の過疎地に限ったことではなく、地方都市の名前もあがっており、ひとごとではない。農業や特産品がある地域は、まだ生き残る可能性があるのかもしれない。(ライター:okei)

あわせてよみたい:「人を大切にする経営」とは何か

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