“公平”と”平等”重視のPTA 「無意味な会合」のために仕事を休む母の複雑な心境
ある母親がSNSに投稿した「PTAやめたの私だ」の一言が話題となり、方々でPTAに関する議論が持ち上がっている。
学校と家庭が連携し、子どもの健やかな成長を見守る団体としてPTAが発足したのは1946年。70年以上が経過し、家庭の在り方も変化している今、子どもを持つ母親たちはどんな状況に置かれているのか? 母親の声を聞いた。(取材・文:千葉こころ)
メールや手紙で伝えきれる内容でもわざわざ集まらないといけない
小学校2年生と5年生の子どもがいる川上こずえさん(30代 仮名)。現在、パートで働いているが、子ども一人につき最低1年間はPTA活動に参加しなければならない。
こずえさんの小学校では、年度の初めに各学年から選出された母親が4つの委員に分かれ、月1回の定例会で話し合いをしながら、内容に即した活動をおこなう。
「学校や先生の様子もわかるし、ほかの学年にもママ友ができるので、参加してよかったと感じる面はあります。でも、わざわざ仕事を休んでまで集まる必要があるのかな? ということも多いんですよね」
定例会はPTA役員からの申し送りではじまり、衛生面の管理方法や給食試食会の企画など、そのときどきに必要な内容を話し合う。ただ、特に事案がない場合は情報共有だけで終了することも。
「情報共有だけの日は10分足らずで終了します。あとはお菓子を食べながら雑談して時間を潰すだけ。それはそれで楽しいですけど、『仕事に行ってたらお金になったのにな』とか、つい考えちゃいます」
報告はメールや手紙で十分伝えきれるような内容。それでも集まらなければならないは、各委員の公平性を保つためだという。
「大変な委員は情報共有だけで終わる日がないと聞きます。だから参加回数は平等にってことなのでしょうけれど、正直、意味のない集まりのために仕事を休まなければならないのは納得がいきません」
パートとはいえPTAで休むのは避けたい、家計だって厳しい
働く母親にとって、定例会以外にも頭を悩ませる出来事がある。それが、学校行事やPTA主催のイベントだ。
「運動会や発表会、式典などの学校行事では、来賓対応、校内の見回り、写真撮影などもPTAの役割です。また、委員独自の活動やPTA主催のイベントはメインで動くので、準備から片付けまですべてやらなければなりません。そのための打ち合わせや準備も必要で、定例会以外にも仕事を休まなければいけないことが多いんです」
行事やイベントの当日はもちろんのこと、担当決めや準備など、事あるごとに定例会とは別日で招集をかけられる。その度に仕事を休まなければならず、「どっちが本職? という気持ちになります」とこずえさんは言う。
しかも、なかには定例会よろしく無意味に感じる集まりもあり、複雑な思いで帰路につくこともあるそうだ。
「パートとはいえ、休みが多ければ職場へ迷惑が掛かります。それに、家計が厳しくて働いているので、できれば休みたくありません。でも、みなさん同じ状況なので、私ばかりが仕事を優先するわけにもいかず……。1年の辛抱だと思って、我慢しているのが本音です。子どもが2人いるので、もう一度やらなきゃいけないと思うと今から気が重いです」
すべての保護者が”平等に”委員活動へ参加し、すべての委員が”公平に”開催されるPTA。専業主婦の多かった発足当時は融通のきく母親も多かったであろう。しかし、働く母親が増えた今、仕事を休んでまで出席することへ抵抗を感じる母親は多い。存続のためには、時代に合わせたPTAの在り方を検討することが歴然だ。