女尊男卑とは

たしかに、思春期の娘が父親を邪険にする、という話はよくある。姑と仲がいい夫を妻が気味悪がる、というのも主婦向け情報番組では頻繁に出てくるエピソードだ。日本の家庭では、男性が理不尽な扱いを受けている、と言えなくもない。

しかしネットではこのツイートに難色を示す声が多数出た。

「お父さんキモいとか洗濯一緒にしないでなんて言った事ないですし、お母さんに優しい男性素敵だと思いますよ。少なくとも私の周りは同意見です。過去のイメージで、女尊男卑なんて簡単に使わないでください」

同じく、ガールズちゃんねるでも、「は？極端すぎない？」と疑問を投げかける書き込みが相次いだ。

「男尊女卑だった中、女性の意見が聞き入れてもらえるようになっただけなのに今度は女尊男卑なわけ？ 」
「鹿児島にきてみて。 男尊女卑すごいから！」

など、否定的なコメントが目につく。日本では「政治家が男性ばかり」ということを挙げ、世の中全体ではまだまだ「男尊女卑」であることを指摘する人もいる。

「女性だって父親と『恋人のように仲がいい』とドン引きされる」

フィフィさんのツイートを整理すると、１つは、「娘が父を汚いもの扱い」する理由が夫婦関係にあるというもの、もう１つは、「母親思いの息子がマザコン扱いされるのは女性の嫉妬が原因」となる。そしてこの2つを理由に「日本は女尊男卑」と結論づけているのだが、これはいささか早計ではなかろうか。

NEWSポストセブンの記事によると、ウェイン州立大学の研究で、女性の方が男性より匂いに敏感であり、娘は父親の、母親は息子の匂いを嫌う傾向にあることが判明したという。これは近親相姦を防ぐためではないかとも言われている。つまり、娘が父親を避けるのは夫婦関係が理由でもないし、日本に限った話でもないと言える。

2つ目の主張に関しても、ツイッターで

「いや男も女も異性親と『恋人のように仲がいい』とドン引きされますよ。マザコンはただ優しいのではなくて『恋人のように仲がいい」から気持ち悪がられてるんです。女だって思春期過ぎてもまだお父さんと一緒にお風呂入ってると引かれますし」

とのコメントがあった。親孝行とマザコンとは明確に異なる。度が過ぎる人を見て「親離れできていない」と感じるならいざ知らず、原因を女性の嫉妬と断定し、さらにそれを「女性を重んじ男性を見下す態度」である女尊男卑に結び付けるのは、果たして適切だろうか。

「女が男を悪く言ってもOKなのに、逆は問題なのはおかしい」

フィフィさんは続いて、以下のツイートも投稿していた。

「夫婦や家族間で感謝や愛情表現が苦手なのは分かる。口では貶していても、それは照れ隠しだったり。でも街頭インタビューだったりで、女が男を悪く言って面白がって、それはOKな風潮ね、逆だったら問題なんでしょ？まぁ、日本の男性が寛大なのか、下品な奴には言わせとけって放ってるだけなのかもね」

確かに、男性のセクハラ被害や痴漢被害は表立って問題にされにくいこともあり、同じ行動でも男性が主体になると叩かれやすかったり、顕在化しにくかったりするのは事実だろう。

しかし、今回の同氏の最初の呟きからはそうした実情は見えず、「女尊男卑」という言葉の印象だけが強く残り、議論を巻き起こした。もったいない話である。