マイクロソフトの開発職が新卒に年俸700万円 「エンジニアにとって会社の名前に価値がないから初任給が上がる」
マイクロソフトディベロップメントが新卒社員に初年度から年収700万円を出す、ということが話題になっている。同社は、マイクロソフトの100%子会社で、日本におけるマイクロソフトの製品企画・開発を行う。
2018年卒の開発職の募集要項には、2017年4月入社から、「新卒初任給を学卒と院卒共に基本年俸 700 万円に改訂します」とある。初任給を改訂したのは、「優秀な新卒の皆さんにマイクロソフトの魅力をさらに感じていただくため」だという。もちろん通勤交通費は全額支給で、退職金制度も整っている。
「エンジニアとして必要な能力は、学生のうちに培うことができる」
ネット上では、「700スタートとかすごいな」「絶対にマイクロソフトに入りたい人生だった」と羨む人が続出している。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2016年の大卒の初任給の平均は、約20万円。年に2回、2か月分のボーナスが出たとしても年収320万円だ。初任給を産業別に比較すると、確かに情報通信業が最も高いが、それでも月収21万円強、年収に換算して350万円弱にとどまっている。
国内のIT企業ではサイボウズが初任給の高さで有名だが、それでも初年度の想定年収は、東京・大阪勤務で369~462万円。マイクロソフトディベロップメントの初任給がいかに高いかがわかる。
同社の高給ぶりの背景について、人材研究所の曽和利光氏は、「開発職、すなわちエンジニアという職種の特性が関係している」と語る。
「マイクロソフトだから初任給が高いというよりは、エンジニアという職種の特性が関係していると思います。エンジニアとして必要な能力は、学生のうちに培うことができます。社会人と変わらない力量を持った学生もいます。エンジニアの仕事は、知的要素で成り立っているからです。社会に出てから身に付ける、対人能力やマネジメント能力はあまり求められませんし、社会人経験も必要ありません。
私のところにも有名大学の学生がインターンに来ていますが、社会人のエンジニアと同じように仕事をしています。だからたとえ新卒の学生であっても、優秀な人材には、社会人経験者と同じだけの給与を支払うのです。採用も、エンジニアについては、社会人も学生も区別しないという会社も多いと思います」
社会人も学生も区別せずに、優秀なエンジニアには高い給与を支払う。これはマイクロソフトだけでなく、アップルやグーグルでも同じだという。
これが営業職となると話は違ってくる。営業職には、社会人経験やマネジメント能力、対人能力が求められるため、たとえMBAを取得した学生でもすぐに高い給与を支払うことはできないのだ。
「マイクロソフトの看板もエンジニアには価値がない」
また「マイクロソフトディベロップメントだから高い給与を出せる」ということではなく、「マイクロソフトディベロップメントなのに高い給与を出さないと人が来ない」のだという。
「エンジニアは、流動性の高い職種で、転職をする人が多くいます。転職市場では、勤めていた会社の規模やネームバリューにはあまり意味がないんです。どんなプロジェクトを誰とやってきたのかということが問われます。経験を積んで、きちんとスキルを磨けば、ベンチャー企業から大手企業に転職することも難しくありません。マイクロソフトというブランドも、エンジニアにとってはあまり価値がないのではないでしょうか。だからたとえマイクロソフトディベロップメントのような大手であっても、初任給を上げないと優秀な人材を確保できないのだと思います」