安売り規制でビールの値上がり続く 「買いだめ特需」は本当に起きるのか
夏を目前にして、酒飲みにつらい現実が突きつけられた。ビールがじわじわと値上がりしているのだ。総務省の小売物価統計調査によると今年1~4月の東京都内のビール1パック(350ミリリットル入り缶6本)の平均小売価格は1136円と、昨年同期より9円値上がりしている。
しかも6月から「改正酒税法」が施行され、さらなる値上げが見込まれるという。
現在、酒類の価格については国税庁によってガイドラインが制定されているが、6月以降、原価割れする過度な安売りを行った業者は酒類販売免許の取り消し等の処分を科されることになる。現在の価格で購入することは難しくなるだろう。
成城石井「価格に左右されるお客様は少ない」
ビールの価格上昇はネットでも話題になっている。2ちゃんねるでも5月24日、「【悲報】酒、6月より値上がりします!まとめ買いするなら今」というスレが立ち、「5月はまとめ買い~で酒が飲めるぞ~~」という声が寄せられた。
しかし一方で、「今日から断酒」「まとめ買いしても飲みすぎるからやめておく」という意見も多い。
施行前の「ビール駆け込み特需」はあるのだろうか。キャリコネニュースの取材にセブン&アイホールディングス広報担当は「今のところ、そのようなことは見られない」と話す。
「6月からの値上がりを謳った販売促進は行っていませんが、駆け込み特需があるとしたら月末でしょうか。給料日が25日の方も多いと思うので増えるとしたらこれからかもしれません」
また大手スーパーマーケットの担当者も「むしろ前年より少ない。ビールのトレンド自体、落ちているのかもしれませんね」と肩を落としている。6月以降、どれほどの値上がりが見込まれるかについて聞くと「改正酒税法を遵守した価格設定を行う」と述べるにとどまった。
一方、高級路線の成城石井も「駆け込み需要はない」というが、
「クラフトビールに力を入れているのもありますし、価格に左右されるお客様が少ないというのもあると思います」
といい、今のところ6月から価格を変更する予定はないと話す。
国税庁「酒は安ければ安いほどいい、というわけではない」
そもそもなぜ酒税法の改正に至ったのか。これは2006年の規制緩和で、スーパーや、ドラッグストア等でも酒類の販売可能になったことに起因する。
メーカーや卸売会社から販売奨励金(リベート)を受け、スーパー等はそれを原資にして大幅な値引きをしてきた。格安の缶ビールを目玉商品に集客し、仮に赤字が出ても他の商品の売上でカバーする、という販売戦略だ。ここから採算を度外視した価格競争が起こるようになり、主力商品が酒類である中小酒販店は経営不振に陥った。
これを受け小売酒販組合は40万件の請願書を提出し、2016年5月に改正酒税法が成立した。国税庁課税部酒税課の担当者は以下のように話す。
「目的は酒税の確保と適正価格への修正です。お酒は依存性が高いこと、また未成年の飲酒問題からも安ければ安いほどいい、というわけでもありません」
また今後の価格動向についてはこう語る。
「現時点で6月以降の価格は何とも言えませんが、現在メーカーが自社基準の見直しを行っています。すでに不当なリベートを減らしているメーカーもあり、そのため施行前に値上がりが起きているようです」
6月までにビール特需は起こるのか、それともビール離れが加速するのか。もはや見守るしかないようだ。