地方出身の長男にのしかかる「いつかは地元に」問題 Uターン転職を「辛すぎる縛り」と感じる人も
僕は九州育ちの一人っ子だが、親に全く頼りにされていないので何年も地元に戻っていない。一応長男であるのに、ここまでのんびり暮らしていられるなんて、自分の境遇に感謝してもし切れない。
だが、地方出身の長男坊となれば、普通はここまで自由にはやっていけないものだ。少なくとも僕の同級生たちを見れば、大卒で首都圏に就職しても、30歳前後で続々と地元に舞い戻っていった。
別に都会の生活に疲弊したというわけではない。地方育ち特有の、「長男だから地元に戻って家族の面倒を見なければならない」や「家業を継がなければならない」というパターンが、マジで多いのだ。彼らからすれば、地元ってのはある種の呪いのようなものなのかも知れない。(文:松本ミゾレ)
「そろそろUターン転職の時期かぁ」自分の生まれの不幸を呪う…
先日、2ちゃんねるで「地方出身の長男とかいう辛すぎる縛り」というスレッドを見かけた。このスレッドを立てた人物も、例に漏れず地方から上京していた長男坊。しかし、就職で上京しても、「いずれ(地元に)帰ってこなければいけない模様。そろそろUターン転職か」と綴っている。
他人事ながら気になるというか、ちょっと同情しそうになる。地方なら、せめて千葉の田舎の方とか、最悪でも群馬とかの新幹線で1時間かからないくらいのところに生まれ落ちたかったと、僕の周囲の出戻り組もよく嘆いている。
飛行機を使わないと帰省できないような距離に地元があって、なおかつ都内で仕事をしている長男となれば、きっとことあるごとに「ああ、いずれ地元に戻るのかな」と思ってしまうのだろうか。
「家賃払うのがアホらしくなって実家に戻った」という人もいるけど……
さあ、ここでこのスレッドに寄せられた、地方出身の長男……つまりこの問題の当事者たちの声も、いくつか紹介していきたい。
「家によっては自由にしても良いよってとこもあるみたいだが、ワイは親に帰って来い言われとる」
「ワイ農家の長男。この肩書きだけで事故物件なんやろなあ」
と、このような具合に自分の今後について辟易している長男たちの声がいくつも目に付いた。
地方出身者でも、長男でもない人にとっては「土地に縛られるとかマジかよ」ぐらいの話かもしれないが、いざこういう問題の当事者になってしまうと、色々と頭を悩ませる問題ってあるものだ。
土地持ちであればその管理もしなければならない。墓も定期的に手入れをしないとならない。年老いた両親の世話もしなければならない。地方出身者がいくら東京でバリバリ働いていたところで、いつかはこの手の問題に直面し、泣く泣く地元に戻るという事例は無数にある。
一方で「ワイみたいに家賃払うのがアホらしくなって実家に戻ったのは少数派なんやね。一人暮らししてた頃と比べて段違いに貯金できて草」という楽観的な声もある。一見すると能天気だが、相続問題で揉める要素さえなければ一理あるものだ。
無理に都会でカツカツな生活をしている人にとっては、実家に戻った方が生活費は間違いなく浮く。変に見栄を張って貯金もできない独り暮らしを続けるよりも、この書き込みの主のように地元に戻って実家で暮らすというのは、生き方としては別に間違っていない。
だけどやっぱり、都会での生活が気に入っている田舎育ちの長男にとっては、Uターン転職というのは普通魅力的には思えないものだ。なんせ田舎なんて出会いもないし、仕事があっても賃金が安いし、娯楽もそんなに多くない。せいぜいパチンコぐらいしかないという地域もある。
都会の彩りを知って、水が合っていると自負している人にとっては、その上でまた地元に引き返すなんて選択は、苦痛以外の何物でもないはずだ。
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