親同士が組織化して企業を監視 働く若者を守る「PTA」が結成される時代は来るか
ここ最近の就職活動では、親の承認がボトルネックとなっているようだ。子どもが決めた内定に親が反対したために、入社を断られた会社も少なくない。そうした事態を避けるため、内定を出す際に就活生の親に電話確認する「オヤカク」を行う会社もあるという。
過保護という気もする一方で、逆にまだ足りないという意見もある。webディレクターのkimusawa氏は、12月7日にオールアバウト「newsdig」に寄稿したコラムで「親はもっと子の就活に口出しするべき」と提唱。入社後も親が企業を監視することで「ブラック企業を減らせるのではないでしょうか」と書いている。
子どもは「空気を読むから自由に発言できない」
kimusawa氏は、現代はブラック企業が「当たり前のように存在」する社会であるが、「場の空気を乱す変わったヤツだ」と思われることを恐れて、労働者としての権利の主張ができず、理不尽な労働に耐えるしかない若者が多いと指摘する。
そこで「空気を読む必要がない外部の人間」にどうにかしてもらうしかないとしながら、労働組合に頼むのも「何か大きな壁」を感じる。ならば空気を読まず、違法と自由に発言することができる「親に頼るのが妥当」とし、こう提案している。
「学校のPTAのように、親同士が組織化して企業を監視することによって、企業もサービス残業を強いることはできなくなるのではないでしょうか」
確かに親は子どもよりも社会人経験が豊富で、有効なアドバイスが出せる場合も少なくないだろう。しかしそれはあくまでも、子どもが主体的に行動することが前提になった助言であり、親が企業を監視するという発想はいかがなものか。
そもそも子どもとはいえ、すでに成人を迎えた若者を「空気を読んでしまい権利の主張ができない」と決めつけるのにも違和感がある。その部分を根本的に教育し直した方がいいのではとさえ思ってしまう。
しかし現実は、さらに先を行っているようだ。「PTA」を設置するところまではいかないまでも、新入社員の親を集めて積極的にコミュニケーションを取る企業も出ている。
「子どもの入社後の処遇・待遇」を親が問い合わせ
週刊東洋経済11月29日号に掲載された「企業、大学も親対策 親は何をすべきか」と題した記事では、ITベンチャーのサイボウズの取り組みを紹介している。同社は毎年12月、入社を控えた新入社員の親を集めて「会社参観日」を開催するという。
参観日には、会社のトップも参加して親の質問に回答。親に渡される手土産の中には、社長と副社長の名刺が入っており、経営者に連絡ができる。同社の人事担当者は記事中で、
「当社は成長過程にあるベンチャーで、大企業のような信用はまだない。入社後も親の理解は重要」
と明かす。同社はベンチャーとはいえ、2006年に東証1部に上場を果たした有名企業だ。それでもこのような取り組みを行うということは、内定後も子どもの就職を気に掛ける親がそれだけ多いということなのだろう。
人材会社のディスコが2013年に行った査では、約16%の企業が「親から連絡をもらったことがある」と回答し、その内容は「入社後の処遇・待遇」が28%で最も多かったという。
少子化の影響で、親と子どもの関係がそれだけ濃くなったということか。変化を受けた対応が求められる一方で、問題は「子離れできない親」にあると首を傾げる人事担当者も少なくないのではないか。